外食業界M&Aの最新動向と事例 :大手グループの切り出しとブランドの取得

外食業界M&A・事業承継

(2026年10月更新)

外食の売上高は回復が進んでおり、2025年の伸びは客数より客単価によるものでした。人手不足と人件費の上昇は続いています。この数年の外食業界M&Aを見ると、国内では、三菱商事が米国の投資ファンドによる日本KFCホールディングスの非公開化に合わせて保有株式を手放し、FOOD & LIFE COMPANIESが京樽の株式をSRSホールディングスに譲渡するなど、大手グループが保有してきた外食会社を手放す取引が続きました。並行して、コロワイド、すかいらーくホールディングス、サンマルクホールディングスなどの上場外食グループが、投資ファンドや個人株主が保有するチェーンを取得しています。海外では、ゼンショーホールディングス、トリドールホールディングス、コロワイド、吉野家ホールディングスが、現地の外食企業を取得しています。

本稿では、国内外での買収・提携を検討される事業会社の経営企画・事業投資部門、投資ファンドのご担当者、および事業承継や資本政策を検討されている外食企業のオーナー・親会社の皆様を念頭に、外食業界の市場構造と業界プレイヤーの構図、国内の再編事例、国内大手による海外での買収事例を整理し、買い手が確認する業界固有の要素と、買収・売却それぞれの論点をまとめます。


1. 外食業界の市場構造 — 客単価の上昇を伴う売上の回復と再編の要因

市場規模

日本フードサービス協会(JF)と食の安全・安心財団の推計によると、2023年の外食産業の市場規模は24兆1,512億円で、前年比20.2%増と2年連続で前年を上回りましたが、2019年の水準を8.1%下回っていました(本稿の執筆時点で公表されている最新の推計。日本フードサービス協会「令和4年・5年 外食産業市場規模推計について」)。うち飲食店は14兆1,313億円(前年比18.6%増)です。外食産業の市場規模には含まれない、持ち帰り弁当や惣菜などの料理品小売業は、同じ推計で7兆6,316億円(同3.1%増)でした。

JFの会員社を対象とする外食産業市場動向調査では、2025年の全店売上高は前年比107.3%で、客数は102.9%、客単価は104.3%、店舗数は100.7%でした(日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 2025年 年間結果」)。2026年8月の全店売上高は前年同月比104.9%で、客数は102.6%、客単価は102.3%と、客数の伸びが客単価の伸びをわずかに上回りました(同「2026年8月度 調査結果」)。

総務省・経済産業省「令和3年経済センサス-活動調査」では、飲食店と持ち帰り・配達飲食サービス業の民営事業所は55万3,986、従業者は405万2,827人で、事業所の約58%にあたる32万714が個人経営です(農林水産省「外食・食文化・食品ロスをめぐる情勢」)。

業態別の特性

外食は業態によって、客数と客単価の動き、店舗の立地、ブランドの権利の持ち方が異なります。本稿の事例でも、買い手は取得の理由として、業態・立地・価格帯の補完を挙げています。

業態2025年の売上高前年比(客数/客単価)特記事項
ファーストフード107.5%(103.0%/104.4%)洋風、和風、麺類、持ち帰り米飯/回転寿司を含む。持ち帰り米飯/回転寿司は客数が96.0%と前年を下回った。海外ブランドの本部とのマスターフランチャイズ契約で運営される例がある(日本KFC、日本サブウェイ)
ファミリーレストラン107.2%(103.1%/103.9%)和風は108.9%、中華は110.2%、焼き肉は102.2%。ロードサイドを中心に店舗網を持つ事業者がある(SRS)
パブ・居酒屋104.0%(101.3%/102.6%)売上高の伸びが他の業態を下回った
ディナーレストラン106.6%(106.0%/100.6%)客数の伸びが客単価の伸びを上回った
喫茶109.8%(101.1%/108.6%)客単価の上昇が売上を押し上げた。ファンドが保有していたカフェチェーンを外食グループが取得した例がある(C-United)

業態の区分と数値はJFの外食産業市場動向調査によります。

業界再編を動かす5つの要因

  1. 客単価の上昇を伴う売上の回復 — 2023年の市場規模は2019年を8.1%下回っており、2025年の全店売上高の伸び(7.3%)は、客数(2.9%)より客単価(4.3%)の上昇によるものでした。店舗数の増加は0.7%にとどまります。客数が大きく伸びないなかで売上と利益を伸ばすには、価格を設定できるブランドと、食材の調達・物流の規模が問われます。事例の買い手は、取得の理由や統合効果に、調達・物流の共有や、客単価・価格帯の異なるブランドの組み合わせを挙げています(第3章)。
  2. 人手不足と人件費の上昇 — 厚生労働省によると、2026年8月の有効求人倍率(常用、パートを含む、原数値)は、飲食物調理従事者で2.21倍、接客・給仕職業従事者で2.31倍と、職業計の1.06倍を大きく上回っています(厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」)。2026年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,177円(前年度比56円増)とする答申が全都道府県で出そろい、2026年10月から12月にかけて順次発効します(厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金 答申状況」)。採用・教育を単独で担う負担が増しており、事例の買い手は、取得の理由や統合効果に人材の活用や育成を挙げています(事例①④)。
  3. 訪日客の飲食需要 — 観光庁「インバウンド消費動向調査」によると、2025年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,549億円(確報)で、うち飲食費は2兆688億円(構成比21.9%)でした(観光庁「インバウンド消費動向調査 2025年暦年の調査結果(確報)の概要」)。サンマルクホールディングスは、京都勝牛と牛かつもと村の取得の理由に、インバウンド観光客の取り込みと海外展開を挙げています(事例⑤)。
  4. 大手グループの事業ポートフォリオの見直し — 三菱商事は日本KFCホールディングスの株式の譲渡にあたり、中期経営戦略に基づく事業ポートフォリオの入れ替えを挙げ、FOOD & LIFE COMPANIESは京樽の譲渡にあたり、国内外のスシロー事業への経営資源の集中を挙げました。京樽は2021年に吉野家ホールディングスからスシローグローバルホールディングス(現FOOD & LIFE COMPANIES)に譲渡され、約5年後の2026年に同社からSRSホールディングスに移りました。2025年には、セブン&アイ・ホールディングスが、デニーズを運営するセブン&アイ・フードシステムズを含むスーパーストア事業を、米国の投資ファンドであるベインキャピタルが出資する会社に承継させています(第2章)。
  5. 事業承継とファンドの出口 — 中小企業庁は2019年の資料で、2025年頃までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者が約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の約3分の1)で後継者が未定であること、廃業の急増により2025年頃までの10年間の累計で約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があることを試算していました(試算の対象期間は既に終了。中小企業庁「事業承継・創業政策について」)。総務省「個人企業経済調査」(2025年)では、後継者がいない個人企業の割合は全体で82.3%、宿泊業・飲食サービス業では86.4%でした(総務省統計局「個人企業経済調査 2025年 結果の概要」)。法人の取引では、承継に加えて、投資ファンドの出口としての譲渡が目立ちます。資さん、しんぱち、C-United、キングファクトリーグループは、いずれもファンドが保有していたチェーンで、事業会社に譲渡され、または譲渡が決まっています(事例③④⑧)。

2. 業界プレイヤー構図

上場の大手外食グループ

会社連結売上高主な業態と直近の動き
ゼンショーHD1兆2,641億円(2026年3月期)牛丼「すき家」等。海外で持ち帰り寿司事業を取得(AFC 2018年、SnowFox 2023年、Sushi&Food Factor 2026年)。2023年にロッテリアをグループに加えた
すかいらーくHD4,578億円(2025年12月期、売上収益)ファミリーレストラン等。2024年に資さん、2026年にしんぱちを取得
FOOD & LIFE COMPANIES4,296億円(2025年9月期、売上収益)回転寿司「スシロー」等。2026年に京樽の全株式をSRSホールディングスに譲渡
日本マクドナルドHD4,166億円(2025年12月期)ハンバーガー
コロワイド3,001億円(2026年3月期、売上収益)居酒屋、焼肉、回転寿司等。2025年に豪州のステーキレストラン運営会社、2026年にC-Unitedを取得
トリドールHD2,787億円(2026年3月期、売上収益)「丸亀製麺」等。香港の譚仔雲南米線(Tam Jai)、英国のFulham Shoreを取得
くら寿司2,451億円(2025年10月期)回転寿司
吉野家HD2,257億円(2026年2月期)牛丼、うどん、ラーメン。国内でラーメン事業の取得を重ね、2026年に米国Kizukiの持分70%を取得
クリエイト・レストランツHD1,654億円(2026年2月期、売上収益)多業態。国内の小規模なオーナー企業の取得を継続

上位の外食グループの一部は、国内でブランドを取得する一方、海外でも現地企業を取得しています。FOOD & LIFE COMPANIESのように、非中核とした会社を譲渡してグループの事業を絞り込む動きもあります。

上場の中堅・専門業態

会社連結売上高主な業態と直近の動き
王将フードサービス1,168億円(2026年3月期)中華「餃子の王将」
ワタミ933億円(2026年3月期)居酒屋、宅食等。2024年に日本サブウェイ合同会社の持分を取得し、サブウェイの日本事業を運営
サンマルクHD884億円(2026年3月期)ベーカリーレストラン、カフェ、パスタ。2024年にジーホールディングス(京都勝牛)と牛かつもと村を取得
SRSホールディングス764億円(2026年3月期)和食さと、にぎり長次郎等。2025年にすし弁慶、2026年に京樽を取得
ユニシアHD(旧串カツ田中HD)211億円(2025年11月期)串カツ田中。2025年にピソラを取得

中堅の上場外食企業には、他社のブランドを取得して店舗網を広げてきた企業があります。SRSホールディングスは、2025年9月に鳥取県米子市のすし弁慶(すし弁慶、回転すし北海道の6店)を、オーナーである社長から全株式を取得する形でグループに加え、取得の理由に、境港などから調達する鮮魚と大ぶりのネタで山陰で評価を得ていること、既存の寿司ブランドとの相乗効果を挙げています。同社のグループ店舗数は、2026年3月末で780でした。

大手グループが保有してきた外食会社

外食会社は、商社、食品メーカー、小売、外食グループの傘下にも置かれてきました。日本KFCホールディングスは、1970年の設立当初から三菱商事が経営に参画し、2024年まで同社が35.12%を保有していました。壱番屋は2015年にハウス食品グループ本社の連結子会社となりました。京樽は、吉野家ホールディングス、スシローグローバルホールディングス(現FOOD & LIFE COMPANIES)の順に親会社が代わり、2026年9月にSRSホールディングスの完全子会社となりました。ロッテリアは、ゼンショーホールディングスの子会社が2023年にロッテホールディングスから全株式を取得する契約を結び、同年4月にゼンショーグループに入りました。デニーズを運営するセブン&アイ・フードシステムズは、2025年9月にセブン&アイ・ホールディングスの連結から外れ、ベインキャピタルが過半を出資する会社の傘下に移りました。

オーナー系・ファンド保有の企業

非上場の外食企業には、創業者や個人株主が経営するオーナー系の企業のほか、投資ファンドが保有する企業もあります。本稿の事例では、ユニゾン・キャピタルとナイン・ステーツのファンドが保有していた資さん、J-STARのファンドが82.4%を保有していたしんぱち、ロングリーチグループのファンドが保有していたC-United、広島の地域ファンドが95%を保有するキングファクトリーグループが、事業会社に譲渡され、または譲渡が決まっています。個人株主からは、ジーホールディングス(京都勝牛)、牛かつもと村、ピソラ、一幻フードカンパニー、ロンなどが上場外食企業に譲渡されています。

関西への集積

本稿で取り上げる企業のうち、FOOD & LIFE COMPANIES(大阪府吹田市)、SRSホールディングス(大阪市中央区)、王将フードサービス(京都市山科区)は関西に本店を置き、くら寿司は登記上の本店を堺市に、業務の拠点を大阪府貝塚市に置いています。吉野家ホールディングスが取得した宝産業(京都市伏見区)、クリエイト・レストランツHDが2026年に取得したロン(グリルRON、大阪トンテキ、大阪市)も関西の会社です。


3. 国内の外食業界M&A事例 — 大手グループからの切り出し(カーブアウト)、ファンド・オーナー保有企業の譲渡と、海外資本による取得

事例① SRSホールディングス × 京樽(2026年)— 外食グループ間での切り出し

和食さと等を展開するSRSホールディングスは2026年8月7日、FOOD & LIFE COMPANIESが保有する京樽の全株式を、株式取得により37億4,500万円(アドバイザリー費用等を含め約37億9,000万円)で取得する株式譲渡契約を締結し、京樽は2026年9月にSRSホールディングスの完全子会社となりました。京樽は1932年に京都で割烹料理店として創業し、1938年に東京・日本橋人形町に料亭「京樽」を開いた会社で、2026年6月末の店舗数は181です。2025年9月期の主な事業の売上高は、グルメ寿司(回転寿司みさき等、2026年6月末で89店)が137億2,500万円、テイクアウト(京樽、同92店)が85億5,600万円、外商事業が7億7,800万円で、全体の売上高は235億3,200万円、営業利益は6,000万円でした。2025年9月期末の資本合計は30億400万円のマイナスで、FOOD & LIFE COMPANIESが譲渡の前に京樽の新株1株を64億8,000万円で引き受け、債務超過を解消し、同社からの借入を返済させる手順が取られました。

FOOD & LIFE COMPANIESは譲渡の理由として、次の成長段階の投資を担えるパートナーへの譲渡が京樽の企業価値の最大化につながると判断したこと、経営資源を国内外のスシロー事業に集中することを挙げています。SRSホールディングスは、全国展開で課題であった首都圏の店舗網の拡充(首都圏の店舗は2026年6月末の基準で14から101に増加、首都圏に山梨県を含む)、駅近や商業施設に強い京樽と、ロードサイドを中心とする自社ブランドとで出店立地が重複しないこと、京樽の製造工場を和食さと等のグループの和食事業向け製品の製造拠点とすることを挙げ、商品開発、共同購買、寿司職人の育成での協業を見込んでいます。京樽は2021年4月にも、吉野家ホールディングスからスシローグローバルホールディングス(現FOOD & LIFE COMPANIES)に全株式が譲渡されており(価格は非開示)、このとき買い手は、テイクアウト寿司での知名度と好立地、持ち帰り・宅配需要への対応を取得の理由に挙げていました。

本案件は、(i)外食グループが非中核とした外食会社を、別の外食グループが取得した、(ii)売り手が譲渡の前に増資を引き受けて債務超過を解消し、借入を返済させたうえで譲渡する形を取った、(iii)買い手の狙いに、立地の異なる店舗網の補完と、製造拠点の活用が含まれていた、という点を示しています。

事例② カーライル × 日本KFCホールディングス(2024年)— 商社が設立から関与した上場外食会社を海外ファンドが非公開化

三菱商事は2024年5月20日、米国のカーライル・グループのファンドによる日本KFCホールディングスの非公開化に合意し、保有する全株式(35.12%)を手放す契約を締結しました。カーライルが間接的に全株式を保有する株式会社クリスピーが、1株6,500円(前営業日の終値5,330円に対し21.95%の上乗せ)で公開買付けを行い(2024年5月21日〜7月9日)、議決権の51.21%を取得しました。三菱商事は公開買付けに応募せず、株式併合の後に、日本KFCによる自己株式の取得に1株5,091円(株式併合前の換算)で応じる手順とされました。この価格は、三菱商事の税引後の手取りが、6,500円で応募した場合と同等になる水準に設定されています。日本KFCホールディングスは2024年9月18日に上場廃止となりました。

三菱商事は、「中期経営戦略2024」に基づく事業ポートフォリオの入れ替えのなかで、少子高齢化などを背景に日本KFCのさらなる成長にはカーライルが最適なパートナーと判断したと説明しています。公開買付届出書で買付者は、商号やサービス名称を変更する予定はないとし、積極的な出店、メニューの多様化、デリバリーやドライブスルー等のチャネルの拡大、デジタルへの投資を進める方針を示していました。国内の店舗は約1,230で、日本KFCは2024年5月19日に、KFC Asia Franchise Pte. Ltd.と新たなマスターフランチャイズ契約を締結しています(2024年12月1日の発効が予定され、公開買付けの成立等が条件)。

本案件は、(i)商社が設立から関与してきた外食会社の株式を、事業会社ではなく海外のファンドによる非公開化に合わせて手放した、(ii)大株主が公開買付けに応募せず、非公開化の後に対象会社による自己株式の取得に応じる手順を取り、公開買付けに応募した場合と税引後の手取りが同等になる価格設定とした、(iii)海外ブランドの日本事業では、取引後の運営の前提として、本部との新たなマスターフランチャイズ契約が結ばれていた、という点を示しています。

事例③ コロワイド × C-United(2026年)— ファンドが保有するカフェチェーンを上場外食グループが取得

コロワイドは2026年3月10日、子会社のコロワイドMDを通じて、珈琲館、カフェ・ベローチェ、カフェ・ド・クリエ等を展開するC-United(東京都港区、1965年創業)の全株式を、株式取得により440億9,200万円で取得すると発表し、2026年4月1日に取得を完了しました。売り手は、ロングリーチグループのファンド(ケイマン諸島の投資事業組合4本)です。C-Unitedの店舗数は2026年2月末で563(直営とフランチャイズの合計)、取得時点で565(直営390、フランチャイズ175)です。2025年3月期の売上高は323億6,400万円、営業利益は13億900万円、EBITDA(営業利益に減価償却費等を足し戻した利益)は27億600万円で、2026年3月期の予想はそれぞれ358億6,300万円、18億2,900万円、35億円でした。取得価額は、2025年3月期のEBITDAの約16倍、2026年3月期の予想EBITDAの約13倍にあたります(株式の取得価額をEBITDAで割った当社計算で、有利子負債を含む企業価値ベースの倍率ではありません)。コロワイドは、のれんを379億5,200万円(暫定)計上しています。

コロワイドは取得の理由として、2030年3月期に連結売上収益5,000億円を目指す「COLOWIDE Vision 2030」の達成手段としてのM&A、カフェ市場の成長、客層と価格帯の異なる3つのブランドで柔軟に出店し、地域でのドミナントを形成できることを挙げ、客単価と利用シーンの観点から業態ポートフォリオを充実させるとしています。統合効果としては、グループの菓子のC-United店舗での販売、物件情報の共有、フランチャイズ展開、調達・物流コストの削減を見込んでいます。

本案件は、(i)ファンドが保有するカフェチェーンの出口として、居酒屋・焼肉・回転寿司を主力とする上場外食グループが全株式を取得した、(ii)買い手が、客単価と利用シーンの異なる業態を加えることを取得の理由に挙げた、(iii)取得価額の大半がのれんとして計上された、という点を示しています。

事例④ すかいらーくHD × 資さん(2024年)・しんぱち(2026年)— ファンドが保有するチェーンを上場大手が続けて取得

すかいらーくホールディングスは2024年9月6日、北九州市に本社を置き、九州を中心にロードサイドでうどん・和食の店を展開する資さんの全株式を、株式取得により240億円(アドバイザリー費用等を含め約240億4,100万円)で取得すると発表し、同年10月4日に取得を完了しました。売り手は、ユニゾン・キャピタルのファンド2本(68.7%、14.4%)、ナイン・ステーツのファンド(14.2%)と個人株主2名(計2.7%)です。資さんの2024年8月期の業績予想は、売上高152億7,400万円、営業利益3億6,000万円、EBITDA 14億600万円で、2022年8月期は4億500万円の営業損失でした。取得価額は、予想EBITDAの約17倍にあたります(株式価値ベースの当社計算)。すかいらーくホールディングスは取得の理由として、資さんの出店計画に対し、自社の出店・物件開発、サプライチェーン、人財、資金を活用できること、自社も幅広い客層に支持される集客力のあるブランドを必要としていたことを挙げ、資さんの良さを守りながら成長を支えるとしていました。資さんの店舗数は、取得時の74から2026年6月末には110となり、2026年1〜6月の増加には業態転換による16店が含まれています。2026年7月時点では、千葉、東京、埼玉、神奈川、群馬にも店舗があります。

すかいらーくホールディングスは2026年3月24日、定食の「しんぱち食堂」を展開するしんぱちの株式を、J-STARのファンド4本(計82.4%)と少数株主から、110億3,900万円で取得すると発表し、2026年4月に取得しました。しんぱちの2025年10月期の売上高は64億5,200万円、営業利益は7,600万円、EBITDAは3億6,600万円です。同社は取得の理由に、低価格帯のブランドの構成の強化を挙げています。

これらの案件は、(i)ファンドが保有するチェーンの出口として、全国展開の上場外食企業が取得を重ねた、(ii)買い手が挙げた理由は、資さんでは自社の出店・物件開発、サプライチェーン、人財、資金による成長の支援、しんぱちでは低価格帯のブランドの強化と、自社の機能の提供と価格帯の補完であった、(iii)資さんの取得価額は予想EBITDAの約17倍で、取得後は業態転換を含めて店舗が増えた、という点を示しています。

事例⑤ サンマルクHD × ジーホールディングス・牛かつもと村(2024年)— 個人株主が保有する専門業態を続けて取得

サンマルクホールディングスは2024年10月4日、牛カツ定食の「京都勝牛」とカフェ「NICK STOCK」を展開するジーホールディングス(東京都中央区、2017年設立)の全株式を、株式取得により110億円(アドバイザリー費用等を含め約112億円)で取得すると発表し、11月1日に取得を完了しました。売り手は個人株主4名で、筆頭株主の保有比率は84.3%でした。2024年7月末の店舗数は、直営74(すべて国内)、フランチャイズ43(国内22、海外21)、他社運営2です。2024年7月期の売上高は92億2,300万円、営業利益は12億2,700万円、EBITDAは14億6,400万円で、取得価額はEBITDAの約7.5倍にあたります(株式価値ベースの当社計算)。

同社は続けて2024年11月19日、「牛かつもと村」を展開するB級グルメ研究所ホールディングス(2018年設立)とBQ International(2017年設立)の全株式を、個人株主5名から104億円(アドバイザリー費用等を含め約105億円)で取得すると発表し、12月6日に取得を完了しました。牛かつもと村の店舗は30(国内28、海外2)で、事業会社である牛かつもと村の2024年6月期の売上高は45億3,200万円、営業利益は6億7,900万円です。

サンマルクホールディングスは取得の理由として、サンマルクカフェ、鎌倉パスタに続く第3の成長ブランドの確立、インバウンド観光客の取り込み、海外進出を見据えた和食業態の獲得を挙げ、物件情報や出店ノウハウの活用、DXの支援、調達・物流網の共有によるコストの削減を見込んでいます。

これらの案件は、(i)個人株主が保有する設立から6〜7年の専門業態の運営会社を、異なる業態を主力とする上場外食企業が取得した、(ii)買い手は同じ牛カツの業態を2か月の間に2件取得し、取得価額の合計は214億円(アドバイザリー費用等を含め約217億円)であった、(iii)取得の理由に、国内の店舗網に加えて、訪日客の需要と海外展開が挙げられた、という点を示しています。

事例⑥ ユニシアHD × ピソラ(2025年)— 売り手のオーナーが買い手に再出資する形

串カツ田中ホールディングス(現ユニシアホールディングス)は2025年9月16日、イタリアンレストラン「ピソラ」を運営するピソラの全株式と新株予約権を、代表取締役の2氏(保有比率85%、15%)から、株式88億400万円と新株予約権6億9,600万円の計95億円で取得することを決め、2025年12月1日に取得しました。ピソラの2025年5月期の売上高は72億2,300万円、営業利益は2億4,500万円です。あわせて、売り手の2氏に対し約30億円の第三者割当による株式の発行を行い、売り手が譲渡代金の一部で買い手の株主となる形を取りました。

本案件は、(i)上場外食企業が、売上高が自社(2025年11月期)の約3分の1にあたる、オーナー2名が保有する外食企業を取得した、(ii)売り手のオーナーが譲渡代金の一部を買い手の株式に再出資し、取得後もグループの企業価値の向上に関与する形を取った、という点を示しています。

事例⑦ クリエイト・レストランツHDほか(2024〜2026年)— 小規模なオーナー企業の連続した取得

多業態の外食グループであるクリエイト・レストランツHDは、国内の小規模なオーナー企業の取得を重ねています。2024年10月には、えびそば「一幻」を札幌、新千歳空港、東京、台湾、香港で11店展開する一幻フードカンパニー(札幌市、2001年設立)を、オーナーである個人株主から全株式を14億8,500万円(アドバイザリー費用等を含め14億9,900万円)で取得しました。同社の2024年4月期の売上高は10億5,800万円、営業利益は2億100万円です。2025年5月にはラーメンの狼煙(さいたま市、2008年設立、5店、2025年2月期の売上高見込み3億3,300万円)を、2026年3月には「グリルRON」「大阪トンテキ」を10店展開するロン(大阪市、1983年設立)を個人株主2名から8億8,700万円(同9億6,300万円)で(2025年3月期の売上高12億3,500万円)、2026年9月には「らぁめん小池」等を東京で10店展開するイノセンス(東京都世田谷区、2015年設立、2025年9月期の売上高5億6,100万円)を、それぞれ全株式の取得によりグループに加えています。同社は一幻について「唯一無二の存在としてお客様から高い評価を得ている」と、狼煙についてブランド価値と商品開発力を評価したと述べています。取得後の2025年12月には、一幻フードカンパニーが狼煙などを吸収合併し、クリエイト・ヌードルズに商号を変えています。

非上場の外食グループも同様の取得を行っています。焼肉酒場「ときわ亭」等を展開するGOSSO(東京都渋谷区)は2024年1月、長崎ちゃんぽんの「じげもんちゃんぽん」を首都圏中心に34店(同社が開業を支援するプロデュース店とライセンス店を含む)展開する大高商事(東京都小金井市、2009年設立)の全株式を取得しました。

これらの案件は、(i)年商3億〜12億円程度のオーナー企業も、上場・非上場の外食グループの取得の対象になっている、(ii)買い手は個別のブランドと商品開発力を評価して取得し、取得後に同じ業態の会社を統合して運営している(クリエイト・ヌードルズ)、という点を示しています。

事例⑧ イズミ × キングファクトリーグループ(2026年、10月譲渡予定)— 小売企業が地域ファンド保有の外食チェーンを取得

広島市に本社を置く小売企業のイズミは2026年10月13日、子会社のイズミ・フード・サービスを通じて、キングファクトリーグループ(広島市中区、2012年設立)の全株式を株式取得により取得すると発表しました。キングファクトリーグループは、広島式汁なし担担麺の「キング軒」と「おこのみ魂悟空」を直営店とフランチャイズ店で展開し、全国21店まで拡大しています。売り手は、ひろしまイノベーション推進機構が無限責任組合員を務め、広島経済圏の中堅・中小企業の承継・成長を支援する「ふるさと連携応援ファンド投資事業有限責任組合」(95.0%)と、新株予約権を行使する代表者(5.0%)です。取得価額は開示されておらず、株式の取得は2026年10月19日の予定です。

イズミは取得の理由として、キングファクトリーグループのブランド力、店舗運営とフランチャイズ事業のノウハウと、イズミの店舗網と事業基盤を組み合わせ、外食事業の成長とグループの「食」の提供価値の向上を図ることを挙げています。

本案件は、(i)外食チェーンの買い手が外食企業ではなく、同じ地域の小売企業である、(ii)地域の事業承継・成長支援のファンド(95.0%)と代表者(5.0%)が、そろって全株式を譲渡する形である、という点を示しています。

事例⑨ 吉野家HDによるラーメン事業の取得(2016〜2025年)— 運営会社と製造会社の両方を取得

吉野家ホールディングスの有価証券報告書によると、同社は2016年6月にラーメン店のせたが屋、2018年3月に「ばり嗎」「とりの助」を展開するウィズリンクホールディングス(2019年3月に完全子会社化)、2024年5月に宝産業、2025年1月に京都で「キラメキノトリ」を展開するキラメキノ未来の株式を取得しました。宝産業(京都市伏見区、1970年設立)は、ラーメン店向けの麺・スープ・タレ・餃子を製造する会社で、国内に京都工場と関東工場を持ち、米国、フランス、タイ、インドネシア、フィリピンに拠点があります。吉野家ホールディングスは宝産業の全株式を取得し(価格は非開示)、取得の理由に、ラーメン事業を次なる柱と位置づけていることを挙げました。

2025〜2029年度の中期経営計画では、ラーメン事業を「第3の事業ドメイン」とし、売上高を2024年度の80億円から2029年度に400億円、営業利益を4億円から40億円、店舗数を500とする目標を掲げています。5年間の成長投資のうちM&A等に400億円(国内外のラーメン事業のM&Aを含む)、ラーメンの国内外の新工場と増産に50億円を充てる計画です。一方で同社は、2021年に持ち帰り寿司の京樽を譲渡しています(事例①)。2026年には、米国のラーメン店チェーンKizukiの持分70%を取得しました(事例⑮)。

これらの案件は、(i)牛丼・うどんを主力とする外食グループが、ラーメンの運営会社だけでなく、麺・スープを製造する会社も取得した、(ii)買い手が中期経営計画で、M&Aの予算と取得後の事業目標を数値で示している、という点を示しています。

事例⑩ ハウス食品グループ本社 × 壱番屋(2015年)— 食品メーカーが過半を取得し、上場を維持

ハウス食品グループ本社は2015年10月、持分法適用関連会社として19.55%を保有していた壱番屋(愛知県一宮市)に対し、1株6,000円で公開買付けを行うことを決めました。買付けの上限を設け、所有割合を51.00%とする取引で、6,000円は前営業日の終値5,370円に対し11.7%上乗せした価格です。筆頭株主の有限会社ベストライフ(19.97%)と、創業者の宗次德二氏(2.07%)、宗次直美氏(1.13%)が応募契約を結びました。壱番屋の取締役会は公開買付けに賛同しつつ、応募するかどうかは株主の判断に委ねるとしました。応募は上限を上回る601万7,932株で、按分により502万1,100株(約301億円)を取得し、決済開始日の2015年12月8日に所有割合が51.00%となって連結子会社となりました。公開買付けの後も、壱番屋の上場は維持されています。

ハウス食品グループ本社は、調達・生産の協働、品質保証、海外展開、カレーメニューの共同開発、新規事業での相乗効果を目的に挙げています。

本案件は、(i)外食企業の買い手が、既に資本関係を持っていた食品メーカーであった、(ii)全株式ではなく51%の取得にとどめ、上場を維持した、(iii)大株主・創業者との応募契約(計23.17%)に一般株主の応募を加えて過半を取得する設計とした、という点を示しています。

事例⑪ スターバックス × スターバックス コーヒー ジャパン(2014年)— 海外の本部が合弁相手の持分を取得

米国のスターバックスは2014年9月23日、サザビーリーグとの合弁会社として1995年に設立したスターバックス コーヒー ジャパン(当時1,000店超)について、保有していない60.5%を二段階の公開買付けで取得すると発表しました。第1段階でサザビーリーグの39.5%を1株965円(約550億円)で、第2段階で残りの約21%を1株1,465円(約445億円)で取得する内容です。スターバックスによると、日本事業の持分の売却についてサザビーリーグから打診を受けたことが発端でした。スターバックスは2014年10月31日に第1段階を完了して保有比率を79%とし、第2段階の公開買付けで14.7%を310億円で取得し(同年12月29日決済)、残りの株式を2015年3月26日に取得して全株式を保有しました。発表時点で、日本でのライセンス契約は2021年3月31日に期限を迎え、自動更新の条項はないとされていました。

本案件は、(i)海外の外食ブランドの本部が、日本の合弁相手からの売却の打診を受けて日本事業を取得した、(ii)合弁相手と一般株主とで買付価格を分けた二段階の公開買付けが用いられた、(iii)発表時に、本部は日本でのライセンス契約の期限と自動更新の条項がないことに言及していた、という点を示しています。

海外資本による取得は、ほかにも、ブランドの本部と海外ファンドによるものがあります。豪州のドミノ・ピザ・エンタープライズは2013年に、米国のベインキャピタルからドミノ・ピザ ジャパン(当時259店)の75%を120億円で取得する契約を結び、2017年10月に残りの持分を取得して全株式を保有しました。バーガーキングの日本事業は、2017年に香港の投資ファンドであるアフィニティ・エクイティ・パートナーズが本部と契約を結んで運営権を得た後、2026年2月に米国ゴールドマン・サックスのプライベート・エクイティ部門に売却されました。反対に、ワタミは2024年10月、サブウェイの本部から日本サブウェイ合同会社の持分100%を取得し、日本サブウェイは本部と10年間のマスターフランチャイズ契約を結んでいます。本稿の調査の範囲では、海外の外食企業が日本のオーナー企業を取得した公表事例は、一次情報で確認できませんでした。


4. クロスボーダーの外食業界M&A事例 — 国内大手による海外での買収

国内で売却や提携を検討するオーナーにとっては、国内大手がどのような基準で何を買っているかが、自社が買い手からどう評価されるかを考える材料になります。国内外での買収を検討する事業会社にとっては、同業大手の投資基準の参照例になります。

事例⑫ ゼンショーHD × Advanced Fresh Concepts(2018年)ほか — 持ち帰り寿司事業の地域を変えた取得

ゼンショーホールディングスは2018年10月16日、米国カリフォルニア州のAdvanced Fresh Concepts(AFC、1986年設立)の全株式を取得することを決め、同年11月16日に取得しました。AFCは、主にフランチャイズで持ち帰り寿司の店を展開し、店舗数は米国で約3,700、カナダと豪州を含めて4,000を超えていました。売り手は、社長として全株式を保有していた石井龍二氏です。取得価額は、キャッシュフリー・デットフリー(現預金と有利子負債がない前提)の企業価値ベースで2億5,710万米ドルで、AFCの2017年6月期の売上高は2億2,600万米ドル、営業利益は2,837万米ドルでした。取得価額は営業利益の約9倍にあたります(企業価値ベース、当社計算)。ゼンショーホールディングスは取得の理由として、メニュー開発、食材調達、物流、店舗運営、店舗開発での相乗効果を挙げています。

同社は2023年6月13日、北米と英国を中心に持ち帰り寿司の店など約3,000店を展開し、寿司の製造卸売も行うSnowFox Topco(英国王室属領ガーンジーに本店)の全株式の取得を決め、同年9月15日に取得を完了しました。取得価額は874億5,000万円(2023年5月末の為替レートでの換算、価格調整前)です。売り手は、英国の投資ファンドであるMayfair Equity Partners(53.9%)とJimKim Holdings(24.8%)等で、SnowFoxの2022年11月期は売上高522億2,000万円、営業損失2,600万円、純資産は349億200万円のマイナスでした。2026年には、欧州の大手小売チェーン等にパック寿司を供給するポーランドのSushi&Food Factorの全株式を、3月19日に取得を決め、5月29日に子会社を通じて取得しています(価格は非開示)。

これらの案件は、(i)国内大手が、経営者が全株式を保有するフランチャイズ中心の企業(AFC)と、ファンドが保有する企業(SnowFox)の双方を取得した、(ii)持ち帰り寿司の事業で、北米のフランチャイズ網(AFC)、北米・英国の店舗と製造卸(SnowFox)、欧州の製造(Sushi&Food Factor)と、地域と機能を変えて取得を重ねている、という点を示しています。

事例⑬ トリドールHD × Fulham Shore(2023年)— 英国の上場外食企業の取得と、その後の再建手続き

トリドールホールディングスは2023年4月5日、ピザの「Franco Manca」(71店)とギリシャ料理の「THE REAL GREEK」(26店)を展開するロンドン証券取引所AIM市場の上場企業、Fulham Shoreを、英国会社法のスキーム・オブ・アレンジメントにより、1株14.15ペンスで取得すると発表しました。Fulham Shoreの取締役会は全会一致で賛同し、取得は2023年7月11日に効力を生じました。取得価額は9,336万9,713ポンドで、アドバイザリー費用等を含め約9,583万ポンド(1ポンド187.57円の換算で約179.7億円)です。Fulham Shoreの2022年3月期の売上高は8,270万ポンド、営業利益は657万ポンドで、取得価額は営業利益の約14倍にあたります(株式の取得価額による当社計算)。トリドールホールディングスは取得の理由として、中長期経営計画に基づくM&Aによる事業ポートフォリオの拡充と、顧客体験・商品の品質・価格に対する価値の観点での成長の余地を挙げています。

取得から約3年後の2026年4月、Franco Mancaを運営する子会社が、不採算店の賃貸借契約を見直すため、会社任意整理(CVA)を申し立てました。トリドールホールディングスは、エネルギーと食材を中心とする高いインフレの継続、最低賃金の上昇による人件費の増加、収益性の回復の遅れを理由に挙げています。CVAは2026年5月に債権者集会で承認されました。THE REAL GREEKを運営する子会社は2026年5月に英国の管理手続き(アドミニストレーション)に入り、管財人が英国の外食事業者と資産の譲渡契約を結んでいます。トリドールホールディングスは2026年3月期に114億800万円の減損損失を計上し、うち海外事業セグメント(Fulham Shore以外を含む)は106億5,200万円で、主に不採算店舗とのれんの減損等によるものと説明しています。同社はこのほか、2017年に香港の「譚仔雲南米線(Tam Jai)」の運営会社の全株式を10億香港ドルで取得すると発表しています。その持株会社は2021年に香港証券取引所に上場し、2025年8月にスキーム・オブ・アレンジメントで同社の完全子会社となって上場廃止となりました。

本案件は、(i)国内大手が、海外の上場外食企業を現地の制度(スキーム・オブ・アレンジメント)で取得した、(ii)取得後に、現地の人件費・エネルギー・食材費の上昇を受けて、ブランドごとに賃貸借契約の見直しと管理手続きという異なる手段が取られた、という点を示しています。

事例⑭ コロワイド × Seagrass Holdco(2025年)— 豪州のステーキレストラン運営会社の取得

コロワイドは2025年5月13日、豪州で17店、アラブ首長国連邦で2店のプレミアムステーキハウスを運営するSeagrass Holdco(豪州ニューサウスウェールズ州、2019年設立)の全株式を、子会社を通じて取得することを決め、2025年6月2日に取得しました。売り手は、個人株主の資産管理会社と豪州の投資ファンド等です。取得価額は発表時には売り手の要請により開示されませんでしたが、その後の決算短信で、支払対価の公正価値は89億6,600万円、のれんは67億8,500万円と開示されています。Seagrass Holdcoの2024年6月期の売上高は1億7,347万豪ドル、営業利益は384万豪ドル、親会社株主に帰属する純損益は708万豪ドルの損失で、純資産はマイナスでした。コロワイドは取得にあわせて増資を引き受け、取得時の債務超過を解消する手順を取りました。

コロワイドは取得の理由として、「COLOWIDE Vision 2030」で掲げる海外事業の拡大、対象会社のアジアへの進出の支援、対象会社と豪州の大手食肉加工会社との関係を通じた牛肉の安定調達と、アジアを中心とするサプライチェーンの構築を挙げています。

本案件は、(i)取得の理由に、店舗網に加えて食材(牛肉)の調達が挙げられた、(ii)対象会社は純資産がマイナスであったが、買い手は取得にあわせて増資を引き受け、債務超過を解消した、(iii)取得価額を発表時には開示せず、取得後の決算で開示する形が取られた、という点を示しています。

事例⑮ 吉野家HD × Kizuki International(2026年)— 70%の取得、自己株式による一部の対価とアーンアウト

吉野家ホールディングスは2026年7月10日、米国の子会社を通じて、シアトルを中心にラーメン店・居酒屋を17店展開し、シアトル、テキサス、サンフランシスコに自社工場を持つKizuki International(2016年設立)の持分70%を、2,870万米ドル(価格調整前)で取得すると発表しました。売り手はKizukiの持分97.66%を保有する会社で、対価のうち749万9,655米ドル(約12億1,900万円)は、売り手の代金債権の現物出資を受け、吉野家ホールディングスの自己株式38万500株を割り当てる形で支払いました。2029年12月期の業績目標の達成度に応じて追加の対価を支払う条項(アーンアウト)も設けられています。現金の支払いは2026年9月1日に、自己株式の割当ては9月2日に完了しました。Kizukiの2024年12月期の売上高は3,667万米ドル、営業利益は122万米ドルで、2025年12月期(未監査)は売上高3,715万米ドル、営業利益186万米ドルです。70%の取得価額を100%に換算すると、2025年12月期の営業利益の約22倍にあたります(価格調整前、アーンアウトを除く当社計算)。同社は取得の理由として、米国市場の戦略上の重要度が高く、Kizukiの店舗網をグループに取り込み、ラーメン事業の海外展開を加速することを挙げています。

本案件は、(i)全持分ではなく70%を取得し、売り手が27.66%を引き続き保有する形を取った、(ii)対価の一部を買い手の株式で支払い、取得後の業績に連動する対価を設けた、(iii)国内のラーメン事業の取得(事例⑨)に続き、海外でも製造拠点を持つラーメンの運営会社を取得した、という点を示しています。


5. 外食業界M&Aで買い手が確認する業界固有の要素

外食企業のM&Aでは、財務数値に加えて、外食業界に固有の要素が確認されます。事例の買い手が公表した取得の理由と統合効果、取得後の手続きをもとに、ブランドと業態、店舗網と立地、生産と調達の3つに整理します。

  1. ブランドと業態 — どの客層に支持され、価格を設定できるブランドか、価格帯や利用シーンで買い手の既存ブランドを補完するか、訪日客や海外に広げられる業態か。事例③の買い手は客単価と利用シーンの異なる業態を、事例④の買い手は幅広い客層に支持されるブランドと低価格帯の構成の強化を、事例⑤の買い手はインバウンドと海外展開を、取得の理由に挙げています。ブランドの権利の所在も確認の対象です。海外ブランドの日本事業では、本部とのマスターフランチャイズ契約が取引と一体で結ばれ(事例②、ワタミとサブウェイ)、ライセンス契約の期限が取引の発表時に言及されていました(事例⑪)。
  2. 店舗網と立地 — 店舗の地域と立地の種類、直営とフランチャイズの構成、買い手の店舗網との補完、出店の余地、店舗の賃貸借契約の条件です。事例①の買い手は、ロードサイド中心の自社店舗と、駅近・商業施設に強い対象会社の店舗の補完を挙げ、事例④の買い手は、対象会社の出店計画を自社の物件開発で支えることを挙げています。事例⑬では、取得後に、店舗の賃貸借契約の見直しが再建手続きの対象になりました。
  3. 生産と調達 — セントラルキッチンや製麺などの製造拠点、食材の仕入先、購買の規模です。事例①では製造工場をグループの製造拠点とすることが、事例⑭では豪州の大手食肉加工会社との関係を通じた牛肉の調達が取得の理由に挙げられ、事例⑨⑮では麺・スープの製造会社や自社工場を持つ会社が取得されています。事例③⑤⑫では調達・物流での、事例⑩では調達・生産での相乗効果が取得の目的に含まれていました。

6. 外食業界の買い手の類型

本稿の事例に表れた買い手は、大きく3つに分けられます。

  1. 国内の外食グループ — SRSホールディングス(事例①)、コロワイド(事例③)、すかいらーくホールディングス(事例④)、サンマルクホールディングス(事例⑤)、ユニシアホールディングス(事例⑥)、クリエイト・レストランツHD(事例⑦)、吉野家ホールディングス(事例⑨)など。海外でも、ゼンショーホールディングス、トリドールホールディングス、コロワイド、吉野家ホールディングスが現地企業を取得しています(第4章)。出店・物件開発、調達・物流、人材の共有による効果を見込み、自社の主力とは異なる業態のブランドを取得する例が多く含まれます。
  2. 隣接業界の事業会社 — ハウス食品グループ本社(食品メーカー、事例⑩)やイズミ(小売、事例⑧)のように、外食以外を主力としながら、調達・品質管理や店舗網で外食と接点を持つ企業です。
  3. 投資ファンド — 日本KFCホールディングスを取得したカーライルのファンド(事例②)のほか、2025年には、ポラリス・キャピタル・グループのファンドが出資する会社が、DDグループのMBO(経営陣による買収)として公開買付けを行い、同社は2025年11月に上場廃止となりました。ファンドは売り手としても多く登場し、資さん、しんぱち、C-United、キングファクトリーグループはファンドから事業会社に譲渡され、または譲渡が決まっています(事例③④⑧)。

このほか、海外の外食ブランドの本部が、日本の合弁相手から日本事業を取得した例や、海外ファンドの間で日本事業が売買された例があります(事例⑪)。


7. 買収・提携を検討する事業会社・投資ファンドへの示唆

本稿の事例から、外食企業の買収・提携を検討する事業会社と投資ファンドにとっての論点を3つに整理します。

① 対象先の所在

事例の対象先は、大手グループが保有してきた外食会社、ファンドが保有するチェーン、個人株主が保有する会社に分かれます。京樽はFOOD & LIFE COMPANIESから外食グループのSRSホールディングスに移り(事例①)、日本KFCホールディングスは三菱商事が保有株式を手放すのに合わせて海外のファンドに非公開化されました(事例②)。C-United(事例③)、資さんとしんぱち(事例④)、キングファクトリーグループ(事例⑧)は、ファンドが保有していたチェーンで、いずれも事業会社に譲渡され、または譲渡が決まっています。個人株主からは、ジーホールディングスと牛かつもと村(事例⑤)、ピソラ(事例⑥)、年商3億〜12億円程度のオーナー企業(事例⑦)が、外食グループに譲渡されました。

買い手は、異なる業態を主力とする外食グループが中心で(事例③⑤⑥⑨)、食品メーカー(事例⑩)や地域の小売企業(事例⑧)も買い手となっています。ファンドが保有していた4つのチェーンの買い手は、いずれも事業会社でした(事例③④⑧)。ファンドが買い手となった例には、カーライルのファンドによる日本KFCホールディングスの非公開化(事例②)があり、海外ブランドの日本事業では、香港の投資ファンドが運営権を得たバーガーキングの日本事業が、米国ゴールドマン・サックスのプライベート・エクイティ部門に売却されています(事例⑪の後段)。非上場のオーナー企業は公開情報だけでは特定しにくく、取得にはオーナーへの直接の打診が必要になります。

② 取引の形

事例には、全株式の取得(事例③⑤⑦⑧、事例④の資さん)、売り手が譲渡の前に増資を引き受けて債務超過を解消し、借入を返済させたうえでの譲渡(事例①)、非公開化で大株主が公開買付けに応募せず、その後の自己株式の取得に応じる手順(事例②)、売り手のオーナーが譲渡代金の一部を買い手の株式に再出資する形(事例⑥)、51%の取得で上場を維持する形(事例⑩)、合弁相手と一般株主とで価格を分けた二段階の公開買付け(事例⑪)があります。海外では、70%の取得と、自己株式による一部の対価、アーンアウトの組み合わせ(事例⑮)や、取得にあわせた買い手による増資(事例⑭)が用いられています。海外ブランドの日本事業では、本部との新たなマスターフランチャイズ契約が取引と一体で結ばれました(事例②)。

価格の水準では、ファンドが保有するチェーンの取得価額が、C-Unitedで2025年3月期のEBITDAの約16倍(事例③)、資さんで予想EBITDAの約17倍(事例④)にあたり(いずれも株式価値ベースの当社計算)、投資ファンドにとっては事業会社への売却の参照例になります。個人株主から取得したジーホールディングスは、EBITDAの約7.5倍でした(事例⑤、同)。どの形をとるかは、親会社・オーナーの意向と、買い手の統合計画によって決まります。

③ 売り手が重視する点

親会社の売り手は、事業の次の成長を担えるかという観点から譲渡先を選んだと説明しています。FOOD & LIFE COMPANIESは、次の成長段階の投資を担えるパートナーへの譲渡が京樽の企業価値の最大化につながると判断したとし(事例①)、三菱商事は、日本KFCのさらなる成長にはカーライルが最適なパートナーと判断したとしています(事例②)。事例②では、三菱商事の税引後の手取りが公開買付けに応募した場合と同等になる価格で、自己株式の取得に応じる手順が取られました。事例⑪の発端は、合弁相手のサザビーリーグからスターバックスへの日本事業の持分の売却の打診でした。事例⑭では、取得価額が売り手の要請により発表時に開示されませんでした。買い手の側も、商号やサービス名称を変更する予定はないこと(事例②)、資さんの良さを守りながら成長を支えること(事例④)を公表しています。

これらの公表からは、事例の売り手が、価格(大株主の場合は税引後の手取り)に加えて、譲渡後の成長の計画とブランドの継続を買い手に求めていたことがうかがえます。


8. 外食企業のオーナー・親会社が検討すべき論点

売却や資本提携を検討するオーナー・親会社の側では、次の3点が検討の出発点になります。

① 買い手候補の範囲

第7章①のとおり、事例の買い手は同業の外食大手に限られず、異なる業態を主力とする外食グループ、食品メーカー、地域の小売企業、投資ファンドが含まれます。海外資本では、米国の投資ファンド(事例②)や海外ブランドの本部(事例⑪)が日本の外食会社を取得しています。海外の外食企業が日本のオーナー企業を取得した公表事例は、本稿の調査では確認できませんでした。買い手候補は、同業の外食グループ、隣接業界の事業会社、ファンド、海外の戦略買い手までを対象に、自社のブランド・店舗網・製造拠点と補完関係にある先を洗い出すことから検討します。

② 自社の資産の整理

第5章の3つの要素(ブランドと業態、店舗網と立地、生産と調達)ごとに、自社のどの資産が、どの買い手にとって価格帯・立地の補完になり、どの買い手にとって調達や管理部門の統合の効果を生むかを整理しておくと、買い手候補との協議で評価の根拠を示すことができます。ブランドの権利(自社の商標か、本部とのフランチャイズ契約か)、店舗の賃貸借契約の条件、セントラルキッチンや製造設備は、事例の買い手が取得の理由や取得後の手続きで扱った項目です。事例④のように、取得後に業態転換を含めて対象会社のブランドの店舗が増える場合もあるため、ブランドが他の立地で再現できるかも整理の対象になります。

③ 取引の形と時期

第7章②の取引の形のうち、どれが適するかは、オーナーご自身の承継の意向、従業員やフランチャイズ加盟店、取引先との関係、譲渡後の経営への関与の希望によって変わります。海外ブランドの日本事業では、事例⑪で本部が発表時に日本でのライセンス契約の期限と自動更新の条項がないことに言及していたように、ブランドの契約の期限も時期の検討の材料になります。ファンドや既存の大株主、海外ブランドの本部との資本・契約関係が将来の選択肢を左右する場合もあるため、現在の資本・契約関係を含めて選択肢を整理しておくことが必要です。


9. Syntax Partnersができること

Syntax Partnersは、M&Aのファイナンシャル・アドバイザー(FA)専業のアドバイザリーファームです。一つの案件では、売り手・買い手のいずれか一方のみを支援します。外食業界の案件にも、国内案件とクロスボーダー案件の双方で対応しています。

買い手側の支援

国内外での買収を検討される事業会社・投資ファンドに対し、貴社の戦略に基づく対象候補の調査・リスト化から、オーナー・親会社への直接の打診、交渉、取引の実行までを支援します。投資ファンドのアドオン買収や、大手グループからの切り出し案件の候補探索にも対応します。外食業界では、大手グループ傘下の会社に加えて、公開情報の少ない非上場のオーナー企業やファンドが保有する企業が対象となるため、候補先の調査とオーナー・親会社への直接のアプローチを当社が担います。海外の対象先については、日英を含む多言語で対応します。

売り手側の支援

売主様・オーナー様の利益を最大化するアドバイザーとして、事業承継と売却を支援します。投資ファンドが保有する企業の売却も対象とします。譲渡先の候補は国内の同業に限らず、隣接業界の事業会社、ファンドに加えて、海外の外食企業などの戦略買い手も対象とします。

  • 買い手候補の探索:国内の外食グループ、隣接業界(食品・小売等)、ファンド、海外の戦略買い手まで、貴社のブランド・店舗網・製造拠点と補完関係にある先を洗い出し、直接アプローチします。
  • 業界理解に基づく取引支援:ブランドの権利とフランチャイズ契約、店舗の立地と賃貸借契約、セントラルキッチンや食材の調達など、外食業界固有の要素を踏まえて、買い手候補への説明と条件の協議を進めます。
  • オーナーの意向を反映した交渉:従業員の雇用、フランチャイズ加盟店や取引先との関係、屋号の扱い、創業家の関与のあり方など、オーナーが重視する条件を明文化し、買い手候補との交渉に反映します。

事業承継、グループ再編、海外の買い手への譲渡、国内外での買収を検討されている経営者・オーナーの皆様からのご相談を承ります。初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。

本稿は、各社の公式発表・IR資料・報道等の公開情報に基づき、Syntax Partners, Inc. が業界動向を整理したものです。


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