食品製造業界M&Aの最新動向と事例 :「コアへの集中」と「PE×食品」が同時進行する中堅再編

食品製造業界M&A・事業承継

(2026年10月更新)

食料品製造業は、それだけで製造業の出荷額の約1割を占め、従業者数は製造業の中分類で最も多い産業です。その事業所の大半は、従業者300人未満の中小規模です。近年の食品製造業界M&Aを見ると、国内では、ハウス食品グループ本社によるデリカシェフの譲渡のように、大手が中核と位置づける領域に経営資源を集め、それ以外の事業をグループ外に移す取引が続いています。並行して、PEファンドが老舗の菓子・飲料・食品メーカーに出資し、オーナー家とともに非公開化する案件や、ファンドの保有を経て上場する案件も出ています。海外では、カゴメ、伊藤ハム米久ホールディングス、ニッスイなどが、原料の生産・一次加工の段階にある海外企業を取得しています。

本稿では、国内外での買収・提携を検討される事業会社の経営企画・事業投資部門、投資ファンドのご担当者、および事業承継や資本政策を検討されている食品メーカーのオーナー・親会社の皆様を念頭に、食品製造業の市場構造と業界プレイヤーの構図、国内の再編事例、国内大手による海外での買収事例を一次情報に基づいて整理し、買い手が確認する業界固有の要素と、買収・売却それぞれの論点をまとめます。


1. 食品製造業の市場構造 — 大きな市場と中小規模の事業所

市場規模

本稿では、食料品製造業に飲料製造業を加えて食品製造業と呼びます。総務省・経済産業省「2025年経済構造実態調査 製造業事業所調査」によると、食料品製造業の製造品出荷額等は2024年に35兆107億円(前年比6.1%増)で、製造業全体の9.2%を占めました。事業所数は2万3,820(2025年6月1日時点、製造業の11.1%)、従業者数は111万7,773人(同14.7%)で、従業者数は製造業の中分類で最も多くなっています。飲料・たばこ・飼料製造業の出荷額等10兆7,596億円を合わせると、製造業全体の約12%です(経済産業省「2025年経済構造実態調査 製造業事業所調査 結果の概要」)。

同じ調査の直近4回分を比べると、出荷額等(各前年の1年間)は2021年の29兆9,348億円から2024年の35兆107億円へ約17%増えた一方、事業所数(各年6月1日時点)は2万4,654から2万3,820へ減っています。近年は食料の消費者物価も上昇しており(下記)、出荷額の増加には価格の上昇分が含まれます。

規模別に見ると、食料品製造業では従業者300人未満の事業所が全体の97.3%を占め、出荷額等の72.8%を担っています。製造業全体では、300人未満の事業所の出荷額等の割合は46.8%にとどまります。農林水産省も、食品製造業の企業2万4,245社(2023年)のうち、小規模・中小企業が97.6%を占めるとしています(企業数は経済構造実態調査の産業横断調査に基づき、上記の事業所数とは調査の対象範囲が異なります)。食品製造業は、中小規模の事業所が出荷の大半を担う産業です。

業種別の構成

食料品製造業の出荷額等を業種別に見ると、次のとおりです(2024年、同調査)。

業種出荷額等構成比本稿の主な事例(海外を含む)
その他の食料品(惣菜、弁当、麺類、冷凍調理食品等)9兆6,287億円27.5%事例①(デリカシェフ)、事例⑤(マロニー)
畜産食料品8兆3,607億円23.9%事例⑬(Greenlea)
パン・菓子6兆1,451億円17.6%事例②(神戸屋)、事例⑧(おやつカンパニー、カバヤ食品)、事例⑯(Blommer)
水産食料品3兆9,995億円11.4%事例③(ワイエスフーズ)、事例⑭(Yadrán)
調味料2兆1,259億円6.1%事例④(ヤマキン)
精穀・製粉1兆9,526億円5.6%事例⑥(熊本製粉)
動植物油脂1兆3,462億円3.8%—
野菜・果実缶詰、農産保存食料品8,475億円2.4%事例⑫(Ingomar)
砂糖・でんぷん糖類6,045億円1.7%第2章(製糖の統合)

業種ごとに、原料、製造工程、販売先が大きく異なります。M&Aでも、どの業種で、どの販路と原料調達を持っているかが、買い手の顔ぶれを左右します。

業界再編を動かす5つの要因

  1. 原材料・エネルギー価格の上昇と価格転嫁 — 消費者物価指数の「生鮮食品を除く食料」は、前年比で2023年に8.2%、2024年に3.8%、2025年に7.0%上昇しました(総務省「消費者物価指数 2025年平均」、2020年基準)。農林水産省の「令和6年度 食料・農業・農村白書」は、中小企業庁の調査をもとに、中小の食品製造業がコストの増加分を価格に転嫁できた割合を55.3%としています。転嫁しきれない部分は利益を圧迫し、購買・生産の規模や製品の付加価値で補う必要が生じます。
  2. 物流の制約 — 国土交通省は、トラックドライバーの時間外労働の規制が2024年4月から適用されたことを受け、対応を行わなかった場合、輸送能力が2024年度に約14%、2030年度に約34%不足する可能性を示しています(国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題」)。農林水産省によれば、農産品・食品の輸送の96.5%はトラックが担っています。事例①の譲渡でも、当事者は規模の拡大による物流の強化を統合効果に挙げています。
  3. 製造現場の人員の確保 — 在留資格「特定技能1号」の飲食料品製造業分野の在留者は、2023年6月末の5万3,282人から、2026年6月末には10万769人(速報値)に増え、特定技能1号全体の23.7%を占めています(出入国在留管理庁)。受け入れ人数が3年で倍増しており、食品製造の現場が人員を外部の人材で補っていることがうかがえます。
  4. 大手のポートフォリオ見直し — ハウス食品グループ本社は、第八次中期計画でスパイス、大豆、機能性素材の3つのバリューチェーンに経営資源を集中する方針を示し、コンビニエンスストア向けの惣菜を製造するデリカシェフを同業の武蔵野に譲渡しました(第3章)。キリンホールディングスもグループの協和発酵バイオのアミノ酸事業を中国の梅花生物グループに譲渡しており(第3章)、大手が非中核の食品・素材事業を、その事業を中核とする会社に移す例があります。
  5. 事業承継 — 中小企業庁は、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者が約245万人となり、うち約半数の127万人で後継者が未定となることを試算していました(中小企業庁「事業承継・M&Aに関する現状分析と今後の取組の方向性」)。食品製造業でも、オーナーが全株式を上場会社に譲渡する案件(事例④⑤)や、過半を譲渡して一部を保有し続ける案件(事例③)があり、2025年にも、はま新、栄田フーズなど、オーナー企業の譲渡の発表があります(第2章)。

このほか、輸出も事業機会を広げています。農林水産物・食品の輸出額は2025年に1兆7,005億円(前年比12.8%増)と過去最高となり、品目別では加工食品が5,725億円で最も多くなりました(農林水産省「2025年の農林水産物・食品の輸出実績」)。


2. 業界プレイヤー構図

大手食品メーカー

国内の大手食品メーカーの動きには、国内での事業の選別と取得、海外での取得があります。国内では、山崎製パン、ハウス食品グループ本社、日清製粉が国内企業・事業を取得する一方(事例②⑤⑥)、ハウス食品グループ本社(デリカシェフの譲渡)、キリンホールディングス(協和発酵バイオのアミノ酸事業の譲渡)、日本ハム(2022年に水産加工のマリンフーズを双日に譲渡)が、グループの中核に位置づけない事業を外部に移しています。海外では、カゴメ(米国のトマト一次加工)、伊藤ハム米久ホールディングス(ニュージーランドの牛肉処理)、ニッスイ(チリのサーモン養殖)、不二製油(米国の業務用チョコレート)などが、原料の生産・一次加工や現地の製造基盤を取得しています(第4章)。

上場の中堅メーカーとロールアップ型の買い手

上場の中堅メーカーには、オーナー企業の取得を継続している会社があります。ヨシムラ・フード・ホールディングス(東京都千代田区、2026年2月期の連結売上高574億8,400万円)は、2026年2月末時点で38社の連結子会社を持ち、中小企業支援のプラットフォームとして、中小の食品メーカーを継続して取得しています(事例③)。2026年2月期には約570件の案件の持ち込みがあったと開示しており、2026年10月にも日本罐詰の株式取得(子会社化)を開示しています。神戸物産は「製販一体」を掲げ、2025年にADEKAから製菓・製パン用のフィリングを製造する上原食品工業を7億円で取得することを、2026年に子会社を通じて新潟県長岡市の白露酒造を取得することを決めています。このほか、エバラ食品工業(事例④)、和弘食品、STIフードホールディングスなどが、オーナー企業を取得しています。本稿では、このように複数の会社を継続して取得し、グループに加える買い手をロールアップ型の買い手と呼びます。

業種内の統合

原料の調達と生産設備の規模が収益を左右する業種では、大手の統合と取得が進んでいます。製糖では、2021年に三井製糖と大日本明治製糖がDM三井製糖ホールディングスとして統合し、2023年には日新製糖と伊藤忠製糖がウェルネオシュガーとして統合しました。いずれの統合でも、各社は目的として、生産拠点の整備、物流・原料調達の集約、研究開発を挙げています。製粉では、日清製粉が2011年から業務提携していた熊本製粉の議決権85.0%を取得しています(事例⑥)。

大手グループ傘下の食品会社

大手食品・飲料・化学グループの傘下には、グループの中核とは異なる業態の食品会社が置かれてきました。ハウス食品グループのデリカシェフ(コンビニエンスストア向けの惣菜)、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスのキューサイ(健康食品)、ADEKAの上原食品工業(製菓・製パン用フィリング)、キリンホールディングスの協和発酵バイオのアミノ酸事業は、いずれもグループ外への譲渡が決まりました。

オーナー系の非上場企業

食品製造業の企業の97.6%は小規模・中小企業です(第1章)。本稿で取り上げたオーナー企業の譲渡では、取引の対象となった会社の規模は、売上高で数億円から100億円超まで幅があります。

対象会社業種売上高(決算期)買い手・取引の形
ワイエスフーズホタテ加工168億6,500万円(2022年7月期)ヨシムラ・フードHDが70%を取得(事例③)
はま新惣菜・調理食品33億9,400万円(子会社との合算、直近期)STIフードHDが取得を決定
マロニーでんぷん麺27億4,400万円(2016年7月期)ハウス食品グループ本社が全株式を取得(事例⑤)
細川食品冷凍食品20億6,500万円(2021年10月期)ヨシムラ・フードHDが全株式を取得
白露酒造清酒8億7,200万円(2025年6月期)神戸物産グループが取得を決定
富強食品春巻の皮5億1,000万円(2023年)ヨシムラ・フードHDが全株式を取得
栄田フーズ天然エキス2億9,700万円(直近期)和弘食品が全株式を取得

オーナーによる資本の選択はさまざまです。永谷園ホールディングスは2024年、創業家とファンドによるMBOで非公開化し、創業家は非公開化後も約34.5%を保有する見込みとされました(事例⑩)。

関西への集積

本稿で取り上げる企業のうち、神戸屋(大阪市東淀川区)、マロニー(大阪府吹田市)、ハウス食品グループ本社(東京都千代田区・大阪府東大阪市)、日本ハム(大阪市北区)、神戸物産(兵庫県加古川市)は、大阪府または兵庫県に本社を置いています。


3. 国内の食品製造業界M&A事例 — 大手の事業の切り出し、オーナー企業の譲渡、ファンドの出資

大手グループ・同業からの事業の切り出し

事例① ハウス食品グループ本社 × 武蔵野(2025年発表、2026年実行)— 大手の非中核事業を同業の専業が取得

ハウス食品グループ本社は2025年9月、連結子会社のデリカシェフ(埼玉県久喜市、1985年設立)の全株式を、コンビニエンスストア向けの弁当・おにぎり・調理パン等を製造する武蔵野(埼玉県朝霞市)に譲渡すると発表しました。対象には株式に加え、久喜工場の土地・建物と習志野工場の資産が含まれ、譲渡価額は合計90億円です。株式の譲渡は2026年1月15日の予定と公表され、ハウス食品グループ本社の2026年3月期決算でデリカシェフは連結の範囲から除外されており、譲渡は実行されています。

デリカシェフの主要取引先はセブン-イレブン・ジャパンで、2025年3月期の売上高は188億4,800万円、営業損益は1億7,200万円の損失でした。ハウス食品グループ本社は譲渡の理由として、第八次中期計画で経営資源を集中するスパイス、大豆、機能性素材の3つのバリューチェーンとの関連性が薄いこと、同業の武蔵野のもとで事業の成長が見込めることを挙げています。両社は、武蔵野の商品開発力・生産管理力との補完と、規模の拡大による調達・物流の強化を見込んでいます。

本案件は、(i)大手食品メーカーが、中期計画で中核とする領域の外にある事業を、同じ業態の専業メーカーに移した、(ii)対象会社が直近期に営業損失を計上していたなかで、工場の土地・建物を含めて90億円で取引が成立した、(iii)買い手の狙いが、コンビニエンスストア向けの生産規模の拡大と、調達・物流の効率化にあった、という点を示しています。

事例② 山崎製パン × 神戸屋(2022年合意、2023年完了)— 包装パン事業を業界大手に移す会社分割

山崎製パンと神戸屋(大阪市東淀川区)は2022年8月、神戸屋の包装パンの製造販売事業と、子会社のデリカ食品事業を、神戸屋が新設する会社に会社分割で承継させ、その全株式を山崎製パンが取得することで合意しました。新会社はYKベーキングカンパニー(本店:大阪市東淀川区)で、2023年3月31日に山崎製パンの完全子会社となりました。山崎製パンの開示によれば、新会社の従業員は599名で、山崎製パンは新会社に20億円を貸し付けています。取得価額は開示されていません。

本案件は、(i)非上場の製パンメーカーが、包装パンという主要な事業を会社分割で切り出し、業界大手に譲渡した、(ii)譲渡の範囲を事業単位で定め、それ以外の事業を自社に残した、(iii)製造販売の事業と従業員を承継会社にまとめて移す形をとった、という点を示しています。

オーナー企業の譲渡と同業による取得(In-In:国内企業同士の取引)

事例③ ヨシムラ・フード・ホールディングス × ワイエスフーズ(2023年)— 過半の譲渡とオーナーの継続保有

ヨシムラ・フード・ホールディングスは2023年8月、北海道森町でホタテ貝柱の加工を主力とするワイエスフーズの株式70%を取得すると発表し、同年10月に取得しました。株式の取得価額は60億2,000万円(取得関連費用を含めて約60億6,000万円)で、100%換算の株式価値は86億円です。ワイエスフーズの2022年7月期の売上高は168億6,500万円、営業利益は16億3,400万円でした。残りの30%は、坂本家の株主2名が引き続き保有しています。

ヨシムラ・フード・ホールディングスは、中小企業支援のプラットフォームとして、取得した会社の社名・ブランドを残したまま、グループで支援する方針を示しています。同社は、このほか2022年に香川県観音寺市の冷凍食品メーカー細川食品(1963年設立)を、2024年に千葉県野田市で春巻の皮を製造する富強食品を、いずれも全株式の取得で傘下に収めています。細川食品の売主は前経営者の相続人、富強食品の売主はオーナーの資産管理会社でした。

本案件は、(i)オーナーが全株式ではなく70%を譲渡し、30%を保有したまま上場会社のグループに加わった、(ii)100%換算の株式価値86億円は、営業利益の約5.3倍にあたる(開示値から算出)、(iii)ロールアップ型の買い手が、相続を契機とする譲渡(細川食品)や、オーナーの資産管理会社からの譲渡(富強食品)の受け皿となっている、という点を示しています。

事例④ エバラ食品工業 × ヤマキン(2022年)— 小袋の製造技術を目的とするオーナー企業の取得

エバラ食品工業は2022年4月、子会社のエバラビジネス・マネジメントを通じて、静岡県焼津市の液体調味料メーカー、ヤマキン(1948年設立)の全株式を取得する契約を結び、同年5月に取得しました。売主は山中健一郎社長(94.9%)と山中恒子氏(5.1%)で、取得価額は開示されていません。エバラ食品工業は取得の理由として、ヤマキンの小袋製品の製造技術と小ロットへの柔軟な対応力を取り込むこと、高齢化と世帯の少人数化により小容量製品の需要拡大が見込まれること、家庭用・業務用・海外向けの生産能力を強化することを挙げています。

本案件は、(i)オーナーが全株式を保有する調味料メーカーを、同業の上場会社が取得した、(ii)買い手が評価したのが、会社の規模ではなく、小袋という特定の製造技術と小ロット対応力であった、という点を示しています。

事例⑤ ハウス食品グループ本社 × マロニー(2017年)— 関西のブランドを大手が取得

ハウス食品グループ本社は2017年7月、でんぷん麺「マロニー」を製造するマロニー(大阪府吹田市、1955年設立)の全株式を取得する契約を結び、同年8月に完全子会社としました。売主は、マロニーの河内幸枝社長が全株式を保有する吉村商店で、譲渡の前に他の株主の株式を集約したうえでの取引でした。マロニーの2016年7月期の売上高は27億4,400万円、営業利益は2億円です。ハウス食品グループ本社は取得の理由として、特許製法による「健康・簡便」なでんぷん麺のブランドを国内外で育成することを挙げています。2022年4月には、マロニーのチルドを除く家庭用事業をハウス食品に移しました。

本案件は、(i)オーナーが全株式を保有する会社に株式を集約したうえで、全株式を大手に譲渡した、(ii)買い手の取得理由が、特許製法に裏付けられた製品ブランドであった、という点を示しています。

事例⑥ 日清製粉 × 熊本製粉(2022年合意、2023年取得)— 業務提携先の地方製粉メーカーを取得

日清製粉グループ本社は2022年6月、子会社の日清製粉が熊本製粉(熊本県、1947年設立)の議決権85.0%を取得すると発表し、2023年1月に子会社化しました。両社は2011年から業務提携の関係にあり、日清製粉グループ本社は取得の理由として、コスト競争力と市場への対応力の向上を挙げています。取得後の熊本製粉の2025年3月期の売上高は118億7,000万円です。

本案件は、(i)業界大手が、10年以上の業務提携を経て地方の同業を資本の傘下に収めた、(ii)全株式ではなく85%の取得とした、という点を示しています。

ファンドによる取得・出資

事例⑦ アドバンテッジパートナーズ・東京センチュリー・ユーグレナ × キューサイ(2020年合意、2021年実行)— 大手グループからの切り出しをファンドと事業会社が共同で取得

コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスは2020年12月、健康食品のキューサイの全株式を、アドバンテッジパートナーズのファンド(67.22%)、東京センチュリー(19.94%)、ユーグレナ(12.84%)が出資する買収会社Q-Partnersに譲渡する契約を結び、2021年2月に実行しました。企業価値は420億円で、キューサイの2019年度の売上高は249億6,800万円、EBITDA(営業利益に減価償却費等を加えた利益)は43億3,900万円でした。ユーグレナは2021年5月にオプションを行使してQ-Partnersの持分を49%に引き上げ、キューサイを連結しています。ユーグレナには残りの持分を取得するコールオプションがあり、2026年8月時点で同社の持分は49%です。

本案件は、(i)大手グループが非中核の食品事業を、ファンドと事業会社の共同出資の会社に譲渡した、(ii)事業会社が少数出資から始めて段階的に持分を引き上げる設計がとられた、(iii)企業価値はEBITDAの約9.7倍にあたる(開示値から算出)、という点を示しています。

事例⑧ D Capital × おやつカンパニー・カバヤ食品(2022年・2024年)— 老舗菓子メーカーへのファンドの出資

「ベビースターラーメン」のおやつカンパニー(1948年設立)は、2014年にカーライルが過半を取得し、2022年12月にカーライルからD Capitalのファンドに株式が譲渡されました。D Capitalは2024年5月、日本カバヤ・オハヨーホールディングスのグループ会社で、岡山市の菓子メーカーであるカバヤ食品(1946年設立)にもファンドを通じて資本参加しました。カバヤ食品は、国内外で成長戦略を模索するなかで、創業の理念を引き継ぎ、成長の可能性を引き出すパートナーとしてD Capitalを選んだと説明しています。出資比率は開示されていません。

本案件は、(i)老舗の菓子メーカーに、ファンドが別のファンドからの株式の引き継ぎ(おやつカンパニー)や、事業会社グループの傘下企業への資本参加(カバヤ食品)の形で出資している、(ii)カバヤ食品が、パートナーの選定の理由として、成長と創業の理念の継承を挙げている、という点を示しています。

事例⑨ 野村キャピタル・パートナーズ・カーライル × オリオンビール(2019年取得、2025年上場)— ファンドの保有から株式上場へ

沖縄県豊見城市のオリオンビール(1957年設立)は2019年、野村キャピタル・パートナーズ(51%)とカーライル(49%)が出資する会社による公開買付けを受けました。1株79,200円の公開買付けで議決権の84.21%が取得され、当時の会長も出資する形でした。両社は取得の理由として、国内外のネットワークと経営支援による成長と、次世代の経営体制づくりを挙げています。オリオンビールは2025年9月に東証プライム市場に上場し、両ファンドが保有株式を売り出しました。

本案件は、(i)沖縄の飲料メーカーが、ファンドの保有期間を経て株式市場に上場した、(ii)ファンドの出口が、事業会社への売却ではなく上場であった、という点を示しています。

事例⑩ 丸の内キャピタル × 永谷園ホールディングス(2024年)— 創業家とファンドによるMBO

永谷園ホールディングスは2024年6月、丸の内キャピタルのファンドが支援するMBOによる公開買付け(1株3,100円)を発表し、成立後に上場を廃止しました。買付価格は前日終値に対し39.45%のプレミアムで、100%換算の株式価値は約542億円です。非公開化後の持分は、ファンド約55.5%、永谷家約34.5%、三菱商事約10.0%となる見込みと公表されました。同社は非公開化の理由として、海外展開、ブランドの刷新、新規事業、M&Aを進めるうえで、短期の業績への圧力を避け、機動的に意思決定することを挙げています。

本案件は、(i)上場の食品メーカーが、創業家とファンドが共同で出資する形で非公開化した、(ii)創業家が非公開化後も3分の1超の持分を保有する設計がとられた、という点を示しています。

このほか、アサヒグループホールディングスは2017年に飲料メーカーのエルビーをポラリス・キャピタル・グループのファンドに譲渡し、ジャフコは2019年に冷凍ケーキの日東スイーツ(宇都宮市)に投資しています。

海外企業による出資・取得(Out-In)

事例⑪ PepsiCo × カルビー(2009年)ほか — 海外企業による少数出資と事業の取得

カルビーは2009年6月、米国のPepsiCoとの資本業務提携を発表しました。カルビーはPepsiCoに新株を発行し、PepsiCoは拡大後のカルビーの20%を保有して取締役1名を派遣しました。対価として、PepsiCoはフリトレー・ジャパンの事業と現金を拠出しています。2025年3月期の有価証券報告書でも、PepsiCoはカルビーの議決権の21.4%を間接保有する「その他の関係会社」です。

キリンホールディングスは2024年11月、グループの協和発酵バイオのアミノ酸事業等を会社分割で切り出し、中国の梅花生物グループの会社に約105億円で譲渡する契約を結び、2025年7月に完了しました。小正醸造(鹿児島県)は2021年、英国Diageoが出資するDistill Venturesから、嘉之助蒸溜所への少数出資を受け入れています。

これらの案件は、(i)海外の食品・飲料大手が、日本の食品メーカーに少数出資し、長期の提携関係を維持している、(ii)海外の事業会社が、日本の大手グループから切り出された食品素材の事業を取得している、という点を示しています。


4. クロスボーダーの食品製造業界M&A事例 — 国内大手による海外での買収

国内で売却や提携を検討するオーナーにとっては、国内大手がどのような基準で何を買っているかが、自社が買い手からどう評価されるかを考える材料になります。国内外での買収を検討する事業会社にとっては、同業大手の投資の参照例になります。外貨建ての金額の円換算額は、各社の開示によります。本稿の倍率は開示値から算出した参考値で、基準(株式価値か企業価値か、営業利益かEBITDAか)が事例ごとに異なるため、相互には比較できません。

事例⑫ カゴメ × Ingomar Packing(2024年)— 出資先の米国トマト一次加工会社を子会社化

カゴメは2024年1月、2016年から20%を出資していた米国カリフォルニア州のIngomar Packing Companyの持分を50%追加取得して70%とし、連結子会社としました。追加取得の価額は2億4,330万ドル(約360億円)です。Ingomarは加工用トマトの一次加工で米国2位、世界4位の会社で、2023年6月期の売上高は3億1,050万ドル、営業利益は5,500万ドルでした。取得により、カゴメグループのトマト一次加工能力は年223万トンとなり、世界14位から3位に上がりました。カゴメは取得の理由として、米国でのトマト加工のバリューチェーンの強化と、グローバルな調達網の強化を挙げています。カゴメの2024年12月期の業績は、売上収益3,068億円、事業利益270億9,000万円で、Ingomarを織り込んだ2025年の目標(売上収益3,000億円、事業利益194億円)を1年前倒しで上回りました。

本案件は、(i)国内大手が、原料の一次加工という上流の段階を海外で取得した、(ii)少数出資を経て過半を取得する段階的な取得であった、(iii)100%換算の株式価値は営業利益の約8.8倍にあたる(開示値から算出)、という点を示しています。

事例⑬ 伊藤ハム米久ホールディングス × Greenlea(2026年)— ニュージーランドの同族経営の牛肉処理会社を取得

伊藤ハム米久ホールディングスは2026年6月、ニュージーランドの子会社ANZCO Foodsを通じて、Greenlea Group(ハミルトン、1982年設立)の全株式を取得する契約を結びました。Greenleaは北島に2つの工場を持つ牛肉処理会社で、Egan家をはじめとする6つの株主グループが保有する同族企業でした。取得の対価は企業価値ベースで約8億ニュージーランドドル(約760億円)で、Greenleaの2025年9月期の売上高は6億1,500万ニュージーランドドル、営業利益は5,500万ニュージーランドドルです。ニュージーランドの競争当局は2026年8月に本件を承認しており、取得の完了は2026年8月末の予定と公表されています。伊藤ハム米久ホールディングスは取得の理由として、ANZCOの事業価値の最大化と、長期経営戦略における海外事業の強化を挙げています。

本案件は、(i)国内大手が、既存の海外子会社を通じて、同じ地域の同業を取得した、(ii)売り手が家族を中心とする株主グループであった、(iii)企業価値は営業利益の約14.5倍にあたる(開示値から算出)、という点を示しています。

事例⑭ ニッスイ × Pesquera Yadrán(2026年1月取得完了)— チリのサーモン養殖会社を取得

ニッスイは2025年12月、チリの子会社Salmones Antarticaを通じて、アトランティックサーモンの養殖・加工・販売を行うPesquera Yadrán(プエルトモント、1966年設立、年産約3万トン)の全株式を取得すると発表し、2026年1月15日に完了しました。ニッスイは「GOOD FOODS 2030」で養殖を成長領域と位置づけており、既存のトラウト、銀鮭にアトランティックサーモンを加えて3魚種の体制とし、2030年に年産8万トン超を目指すとしています。

本案件は、(i)国内大手が、「GOOD FOODS 2030」で成長領域とする養殖の生産能力を、海外での取得により拡大した、(ii)取得の目的が、魚種と生産量の拡大という原料段階の強化にあった、という点を示しています。

事例⑮ ハウス食品グループ本社 × Keystone Natural Holdings(2022年)、森永製菓 × My/Mochi(2026年)— 米国の成長カテゴリーへの参入

ハウス食品グループ本社は2022年9月、米国で豆腐と植物由来の代替肉を製造するKeystone Natural Holdings(2016年設立)の全株式を、企業価値1億1,000万ドル(約152億円)で取得すると発表しました。売り手はKeystone Capital等で、Keystoneの2021年の売上高は5,540万ドル、EBITDAは280万ドルでした。森永製菓は2026年3月、同社が米国の餅アイス市場でシェア1位とする「My/Mochi」を製造・販売するThe Mochi Ice Cream Companyの持株会社の全株式を取得することを決議しました。対象の2025年6月期の売上高は6,000万ドルで、取得価額は開示されていません。

これらの案件は、(i)国内大手が、米国で成長が見込まれる製品カテゴリーの製造・販売会社を取得している、(ii)Keystoneの企業価値はEBITDAの約39倍、売上高の約2.0倍にあたり(開示値から算出)、同案件では足元の利益より事業の成長が評価されたと考えられる、という点を示しています。

事例⑯ 不二製油 × Blommer Chocolate(2019年)— 米国の同族経営の業務用チョコレート会社を取得

不二製油グループ本社は2018年11月、米国シカゴのBlommer Chocolate Company(1939年創業)の全株式を、企業価値7億5,000万ドル(約848億円)で取得する契約を結び、2019年1月に取得しました。売り手は全株式を保有するBlommer家です。Blommerは北米の業務用チョコレートメーカーで、2018年5月期の売上高は9億700万ドル、経営陣による調整後のEBITDAは5,600万ドルでした。不二製油グループ本社は取得の理由として、北米への参入、カカオの持続可能な調達の知見の獲得、原料調達の統合を挙げ、Blommerの経営陣は取得後も続投しました。

本案件は、(i)国内の食品素材メーカーが、海外の同族経営の会社を取得して北米市場に参入した、(ii)取得後も売り手側の経営陣が経営を担った、(iii)企業価値は調整後EBITDAの約13.4倍にあたる(開示値から算出)、という点を示しています。


5. 食品製造業界M&Aで買い手が確認する業界固有の要素

食品メーカーのM&Aでは、財務数値に加えて、食品製造業に固有の要素が確認されます。事例の買い手が公表した取得の理由と統合効果をもとに、製品・技術、販売、生産・原料調達の3つに整理します。

  1. 製品・技術 — どのブランドを持ち、どの製法・技術に裏付けられているかです。事例⑤の買い手は特許製法に基づくでんぷん麺のブランドを、事例④の買い手は小袋製品の製造技術と小ロットへの対応力を、取得の理由に挙げています。STIフードホールディングスによるはま新の取得でも、はま新が展開する創業100年の「味のはま藤」ブランドの獲得が目的とされました。
  2. 販売 — 主要な取引先と販路、その集中度です。事例①の対象会社はセブン-イレブン・ジャパンを主要取引先とするコンビニエンスストア向けの惣菜メーカーで、買い手は同じ業態の専業メーカーでした。事例⑪のPepsiCoとカルビーは、資本業務提携の狙いに全国の販売網を挙げています。
  3. 生産・原料調達 — 工場と設備、従業員、原料の産地への近さです。事例①では工場の土地・建物と設備が譲渡の対象に含まれ、事例②では包装パンの製造販売事業と従業員599名が承継会社に移りました。事例③⑫⑬⑭では、ホタテ、トマト、牛肉、サーモンといった原料の産地にある加工・生産の拠点が、取得の対象となっています。

6. 食品製造業界M&Aの買い手の類型

本稿の事例に表れた買い手は、大きく3つに分けられます。類型ごとに、評価の観点と出資の形が異なります。

  1. 国内の食品メーカー — 同じ業態の専業メーカー(事例①の武蔵野)、業界の大手・上場の同業(事例②④⑤⑥)、取得した会社のブランドを残すロールアップ型の上場会社(事例③のヨシムラ・フード・ホールディングス)、製販一体を掲げる神戸物産などです。事例の買い手は、生産規模の拡大、特定の製造技術やブランドの獲得、原料調達の強化を見込んでいます。
  2. ファンド — アドバンテッジパートナーズ(事例⑦)、D Capital(事例⑧)、野村キャピタル・パートナーズとカーライル(事例⑨)、丸の内キャピタル(事例⑩)などです。事業会社との共同出資(事例⑦)、オーナー家との共同出資(事例⑩)、別のファンドからの引き継ぎ(事例⑧)など、出資の形はさまざまで、出口として上場を選んだ例(事例⑨)もあります。
  3. 海外の事業会社 — PepsiCo(事例⑪)、梅花生物グループ、Diageoなど、日本の食品メーカーに出資し、あるいは大手グループから切り出された事業を取得する海外企業です。本稿の調査の範囲では、海外の事業会社が日本のオーナー系食品メーカーの過半数を取得した事例は確認できませんでしたが、少数出資と事業の取得の例があります。

7. 買収・提携を検討する事業会社・投資ファンドへの示唆

本稿の事例から、食品メーカーの買収・提携を検討する事業会社と投資ファンドにとっての論点を3つに整理します。

① 対象先の所在

事例の対象先は、大手グループ内の会社・事業、非上場メーカーの事業部門、オーナー企業、ファンドが出資する老舗メーカーに分かれます。大手グループ内では、ハウス食品グループ本社のデリカシェフ(事例①)、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングスのキューサイ(事例⑦)、キリンホールディングスの協和発酵バイオのアミノ酸事業(事例⑪)、ADEKAの上原食品工業が、それぞれ同業の専業メーカー、ファンドと事業会社の共同出資会社、中国の梅花生物グループ、神戸物産に移りました。非上場の神戸屋は、包装パン事業を会社分割で切り出して山崎製パンに譲渡しています(事例②)。オーナー企業では、ワイエスフーズ、ヤマキン、マロニー(事例③④⑤)のほか、細川食品、富強食品、はま新、白露酒造、栄田フーズの譲渡があり、買い手はヨシムラ・フード・ホールディングスなどのロールアップ型の上場会社や、同業の上場会社でした。対象会社の売上高は数億円から100億円超まで幅があります(第2章)。

投資ファンドは、大手からの切り出しの買い手、老舗メーカーへの出資者、売り手のいずれとしても登場しています。キューサイはアドバンテッジパートナーズのファンドが東京センチュリー、ユーグレナと共同で取得し(事例⑦)、アサヒグループホールディングスはエルビーをポラリス・キャピタル・グループのファンドに譲渡しました。おやつカンパニーの株式はカーライルからD Capitalのファンドに引き継がれ(事例⑧)、オリオンビールは野村キャピタル・パートナーズとカーライルの保有を経て上場し、両ファンドが保有株式を売り出しました(事例⑨)。

大手グループ内の事業とオーナー企業は公開情報だけでは特定しにくく、取得には親会社やオーナーへの直接の打診が必要になります。

② 取引の形

事例には、株式に工場の土地・建物を加えた取得(事例①、合計90億円)、事業を会社分割で新会社に移したうえでの取得(事例②、事例⑪の協和発酵バイオ)、全株式の取得(事例④⑤)、過半を取得し、オーナーが一部を保有し続ける形(事例③の70%)、業務提携先の85%の取得(事例⑥)、ファンドと事業会社の共同出資で、事業会社が持分を段階的に引き上げる形(事例⑦。ユーグレナは12.84%から49%へ)、ファンドからファンドへの引き継ぎ(事例⑧)、公開買付けによる取得とその後の上場(事例⑨)、創業家とファンドによるMBO(事例⑩。永谷家が約34.5%を保有する見込み)、海外の事業会社による少数出資(事例⑪)があります。価格は、開示値から算出した参考値で、事例③が100%換算の株式価値で営業利益の約5.3倍、事例⑦が企業価値でEBITDAの約9.7倍です(基準が異なるため、相互には比較できません)。どの形をとるかは、親会社・オーナーの意向と、買い手の統合計画によって決まります。

③ 売り手が重視する点

ハウス食品グループ本社は、デリカシェフの譲渡の理由として、中核とする3つのバリューチェーンとの関連性が薄いことと、同業の武蔵野のもとで事業の成長が見込めることを挙げています(事例①)。カバヤ食品は、創業の理念を引き継ぎ、成長の可能性を引き出すパートナーとしてD Capitalを選んだと説明しています(事例⑧)。永谷園ホールディングスは、海外展開やM&Aを進めるうえで短期の業績への圧力を避け、機動的に意思決定することを非公開化の理由に挙げ、創業家は非公開化後も約34.5%を保有する見込みとされました(事例⑩)。オーナーが持分の一部を保有し続けた例(事例③の30%)や、取得後も売り手側の経営陣が続投した例(事例⑯)があり、ロールアップ型の買い手は、取得した会社の社名・ブランドを残す方針を示しています(事例③)。

これらの説明からは、事例の売り手と対象会社が、譲渡後の事業の成長に加えて、創業の理念やブランド、経営への関与の継続を、相手先の選定で考慮していたことがうかがえます。


8. 食品メーカーのオーナー・親会社が検討すべき論点

売却や資本提携を検討するオーナー・親会社の側では、次の3点が検討の出発点になります。

① 買い手候補の範囲

事例の買い手は、同業の専業メーカー、業界大手、ロールアップ型の上場会社、ファンド、海外の事業会社に分かれます(第7章①)。国内では、ヨシムラ・フード・ホールディングス、神戸物産、エバラ食品工業、和弘食品、STIフードホールディングスなどの上場会社が、オーナー企業の取得を続けています(第2章)。海外の事業会社には、少数出資(事例⑪のPepsiCo、Distill Ventures)と、大手から切り出された事業の取得(事例⑪の梅花生物グループ)の例があり、日本のオーナー系食品メーカーの過半数を取得した事例は、本稿の調査の範囲では確認できませんでした。買い手候補は、これらの先の中から、自社の製品・販路・生産拠点と補完関係にある企業を洗い出すことから検討します。

② 自社の資産の整理

第5章の3つの要素(製品・技術、販売、生産・原料調達)ごとに、自社のどの資産が、どの買い手にとって補完になり、どの買い手にとって規模の拡大になるかを整理しておくと、買い手候補との協議で評価の根拠を示すことができます。事例①では、対象会社が直近期に営業損失を計上していたなかで、両社は武蔵野の商品開発力・生産管理力との補完と、調達・物流の強化を見込んでいます。損益だけでなく、生産設備や販売先を含めて事業の全体を整理しておくことが、買い手候補との協議の前提になります。

③ 取引の形と時期

第7章②の取引の形のうち、どれが適するかは、承継の意向、従業員や取引先との関係、譲渡後の経営への関与の希望によって変わります。業務提携先や取引先との関係が将来の選択肢を左右する場合もあるため、現在の資本・取引関係を含めて選択肢を整理しておきます。時期の面では、段階的な取引で、最初の資本関係から過半の取得までに年数を要した例があります。日清製粉と熊本製粉は2011年の業務提携から2023年の子会社化まで約12年(事例⑥)、カゴメとIngomarは2016年の20%出資から2024年の過半取得まで約8年(事例⑫)でした。提携から始める形を選ぶ場合は、こうした期間を含めて譲渡の時期を考えておくことが必要です。


9. Syntax Partnersができること

Syntax Partnersは、M&Aのファイナンシャル・アドバイザー(FA)専業のアドバイザリーファームです。一つの案件では、売り手・買い手のいずれか一方のみを支援します。食品製造業界M&Aの国内案件とクロスボーダー案件の双方に対応しています。

買い手側の支援

国内外での買収を検討される事業会社・投資ファンドに対し、貴社の戦略に基づく対象候補の調査・リスト化から、オーナー・親会社への直接の打診、交渉、取引の実行までを支援します。投資ファンドのアドオン買収や、大手グループからの切り出し案件の候補探索にも対応します。食品製造業では、大手グループからの事業の切り出しに加えて、公開情報の少ない非上場のオーナー企業が対象となるため、候補先の調査とオーナーへの直接のアプローチを当社が担います。海外の対象先については、日英を含む多言語で対応します。

売り手側の支援

売主様・オーナー様の利益を最大化するアドバイザーとして、事業承継と売却を支援します。投資ファンドが保有する企業の売却も対象とします。譲渡先の候補は国内の同業に限らず、ロールアップ型の上場会社、ファンドに加えて、海外の食品・飲料メーカーなどの戦略買い手も対象とします。

  • 買い手候補の探索:国内の同業・大手、ロールアップ型の上場会社、ファンド、海外の戦略買い手まで、貴社の製品・販路・生産拠点と補完関係にある先を洗い出し、直接アプローチします。
  • 業界理解に基づく取引支援:ブランドと製法、主要な取引先と販路、工場と原料調達など、食品製造業に固有の要素を踏まえて、買い手候補への説明と条件の協議を進めます。
  • オーナーの意向を反映した交渉:従業員の雇用、取引先との関係、ブランドの継続、創業家の関与のあり方など、オーナーが重視する条件を明文化し、買い手候補との交渉に反映します。

事業承継、グループ再編、海外の買い手への譲渡、国内外での買収を検討されている経営者・オーナーの皆様からのご相談を承ります。初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。

本稿は、各社の公式発表・IR資料・官公庁の統計等の公開情報に基づき、Syntax Partners, Inc. が業界動向を整理したものです。


関連リンク