
医薬品原薬・CDMO(医薬品の受託開発製造)の業界では、2026年7月に東和薬品が、ベインキャピタル傘下の田辺ファーマから製造子会社の田辺ファーマファクトリーを取得する契約を結びました。同年5月には、日本マイクロバイオファーマの全株式を、インドのGujarat Themis Biosynが出資する会社に譲渡する契約が公表されています。医薬品原薬・CDMO業界M&Aでは、2006年以降、製薬会社が国内の工場を会社分割で切り出し、CDMOや他の事業会社に譲渡する案件が続いてきました。2022年には、海外のCDMOが外資系製薬の日本の工場を取得する契約と、海外の投資ファンドが国内のCDMOを取得する契約も発表されました。
本稿では、国内外での買収・提携を検討される事業会社の経営企画・事業投資部門、投資ファンドのご担当者、および事業承継や資本政策を検討されている医薬品原薬・受託製造の企業のオーナー・親会社の皆様を念頭に、医薬品原薬・CDMO業界の市場構造と業界プレイヤーの構図、国内の製造拠点の切り出しと海外企業による日本での取得の事例、国内企業による海外での取得事例を整理し、買い手が確認する業界固有の要素と、買収・売却それぞれの論点をまとめます。
1. 医薬品原薬・CDMO業界の市場構造 — 製造拠点の見直しと経済安全保障の下での再編の要因
市場規模
厚生労働省の薬事工業生産動態統計によると、2024年の医薬品の生産金額は10兆2,485億円(前年比2.1%増)でした。この統計は、原薬たる医薬品を医薬品の範囲から除いており、原薬の生産金額と、受託生産を分けた金額は示されていません。生物学的製剤の生産金額は7,138億円です。都道府県別の生産金額では、関西の兵庫県が6位(6,089億円)、大阪府が7位(5,547億円)、滋賀県が8位(5,449億円)、京都府が19位(1,628億円)、奈良県が27位(855億円)、和歌山県が35位(426億円)で、関西の2府4県の合計は約2兆円と全国の約2割を占めます(合計と比率は当社試算)。関西以外では、富山県が5位(6,335億円)です(厚生労働省 薬事工業生産動態統計調査)。
原薬の調達については、厚生労働省が経済安全保障推進法に基づく抗菌性物質製剤の安定供給確保の取組方針で、注射用抗菌薬の85%以上を占めるβラクタム系抗菌薬の原材料と原薬が、ほぼ100%中国に依存していると記載しています(厚生労働省 経済安全保障推進法に基づく抗菌性物質製剤の安定供給確保)。
原薬・CDMOの類型別の特性
原薬・CDMOの企業は、どの工程の、どの剤形・モダリティ(低分子、バイオ医薬品等)を手がけるかによって、顧客、設備、規制対応の性格が異なります。M&Aでも、どの剤形の設備と能力を持つかが、買い手の顔ぶれと評価の観点に関わります。
| 類型 | 主な工程・製品 | 事業上の特性(各社の開示に表れたもの) |
|---|---|---|
| 低分子の原薬・中間体 | 化学合成・発酵による原薬と中間体 | 第一三共プロファーマの秋田工場は原薬の能力が年約300トン(事例③)。田辺ファーマファクトリーの小野田工場は2025年度に原薬を45トン生産した(事例⑤) |
| 製剤の受託製造(固形剤) | 錠剤、カプセル、散剤 | エーザイの美里工場は錠剤を年約38億錠(2013年3月期)生産していた(事例④)。製薬会社の工場で、固形剤と注射剤の双方を製造する例がある(事例①②) |
| 製剤の受託製造(注射剤・高薬理活性) | 注射剤、抗がん剤等の高薬理活性製剤 | シオノギファーマは、抗がん剤等の注射剤を中心に受託するナガセ医薬品を取得した(事例⑥) |
| バイオ医薬品のCDMO | 抗体、遺伝子治療、mRNA等の開発・製造 | 富士フイルムのバイオCDMOの売上高は2,541億円(2026年3月期、前期比15.8%増)。国内の事業会社が海外のCDMOと製薬会社の拠点を取得している(事例⑩⑪⑫) |
| 治験薬・プロセス開発 | 原薬の製法開発、製剤・試験法の開発、治験薬の製造 | 武田薬品は大阪市淀川区のファーマシューティカルサイエンス部門の一部(約200名)を、受託製造会社に譲渡すると公表した(事例④) |
業界再編を動かす5つの要因
- 製薬会社の製造拠点の見直し — 第一三共プロファーマ(静岡、秋田、高槻)、田辺三菱製薬工場(足利)、アステラス製薬(西根)、エーザイ(美里)、武田薬品(十三)が、国内の工場や製造機能をCDMOや他の事業会社に譲渡しました(事例①〜④)。第一三共は国内の原薬工場の生産体制の見直しを(事例③)、アステラス製薬は外部の企業との提携による効率的な生産体制を(事例①)、理由に挙げています。2026年には、田辺ファーマが主要な製造拠点を持たない方針に転じるとして、製造子会社の譲渡を決めました(事例⑤)。
- 原薬の海外依存と経済安全保障 — 抗菌薬の原薬の国内製造を支える支援として、2023年7月に、Meiji Seika ファルマ、富士フイルム富山化学、大塚化学と、シオノギファーマ、Pharmiraが、経済安全保障推進法に基づく供給確保計画の認定を受けました。2026年8月の取組方針の改定で、支援の対象は5成分になっています。医薬基盤・健康・栄養研究所の報告書によると、抗菌薬原薬国産化支援基金への国の交付額は約553億円です。
- 後発医薬品の品目統合と供給体制の再編 — 厚生労働省は、成分ごとの供給社数を「理想的には5社程度」とし、5年程度の集中改革期間を置くとしています(厚生労働省 医療用医薬品の安定供給について(2025年2月))。2025年11月20日に施行された改正法で、厚生労働大臣が後発医薬品の製造販売業者等の事業再編等の計画を認定し、5年の時限措置の基金で補助する制度が設けられました(厚生労働省 通知(2025年10月29日))。2025年9月には沢井製薬と日医工が15成分30品目で製造所の集約と品目の統合を行うと発表し、2026年7月には東和薬品が、製造子会社の取得の理由に品目統合を挙げています(事例⑤)。
- バイオ医薬品の製造能力への投資 — 経済産業省のバイオ医薬品製造拠点等整備事業では、2021年度補正予算の2,273.8億円による1次公募で17件・約2,265億円が、2022年度第2次補正予算による2次公募で23件・約955億円が、それぞれ採択されました(経済産業省 採択結果)。国内企業は海外のバイオCDMOの取得と大型の設備投資を続けており、富士フイルムは2025年9月に米国ノースカロライナ州の工場の第1期を開所しました。一方、AGCは2025年8月に米国コロラド州の2拠点からの撤退を公表しています(事例⑩⑪)。
- 投資ファンドと海外企業の参入 — 武州製薬の株主は、東京海上キャピタルのファンドから、2014年にBaring Private Equity Asia(現BPEA EQT)のファンドへ、2022年にKKRのファンドへと移りました(事例④)。三菱ケミカルグループは2025年に田辺三菱製薬をベインキャピタルに譲渡し(事例⑤)、2022年にはドイツのCDMOのAdragos Pharmaがサノフィの川越の工場を(事例⑦)、2026年にはインドのGujarat Themis Biosynが出資する会社が日本マイクロバイオファーマを(事例⑧)取得する契約が発表されました。
2. 業界プレイヤー構図
主な原薬・CDMOの担い手
次の表には、上場会社のほか、製薬会社・事業会社の子会社と、ファンドが保有する会社を含めています。
| 会社 | 資本の形 | 原薬・CDMOの事業と規模(開示がある場合) |
|---|---|---|
| 富士フイルムホールディングス | 上場 | バイオCDMOの売上高2,541億円(2026年3月期)。2027年3月期の予想は3,000億円(iPS細胞関連の事業を組み替えた後の基準)。デンマーク・米国・英国等に拠点(事例⑩) |
| AGC | 上場 | ライフサイエンス事業の売上高1,331億円、営業損失223億円(2025年12月期)。合成医農薬とバイオ医薬品のCDMO(事例⑪) |
| 武州製薬 | KKRのファンドが保有 | 従業員約1,600名、国内4拠点(2022年12月のBPEA EQTの発表)。埼玉県川越市・美里町、福島県会津若松市等(事例④) |
| シミックCMO | 大日本印刷50.1%・シミックホールディングス49.9%の合弁 | 富山・静岡・足利・西根の工場を製薬会社から取得(事例①) |
| シオノギファーマ | 塩野義製薬の100%子会社 | 摂津・金ケ崎・徳島・伊丹の工場。経済安全保障の抗菌薬原薬の認定事業者(事例⑥) |
| 太陽ファルマテック | 太陽ホールディングスの100%子会社 | 大阪府高槻市の工場を第一三共プロファーマから取得(事例②) |
| 田辺ファーマファクトリー | 田辺ファーマの100%子会社(東和薬品へ譲渡予定) | 売上高158億円(2026年3月期)。山口県と福岡県の工場(事例⑤) |
| アルフレッサファーマ | アルフレッサホールディングスの子会社 | 第一三共プロファーマの秋田の原薬工場を取得(事例③) |
企業グループ傘下の企業
原薬・CDMOの分野には、製薬会社の製造子会社と、事業会社・ファンドの傘下のCDMOがあります。シオノギファーマは、塩野義製薬が2018年に生産機能を分社化して設立し、2019年4月から事業を始めた会社で、医療用医薬品と治験薬の受託製造も手がけます(事例⑥)。田辺ファーマファクトリーは田辺ファーマの製造子会社で、2026年に東和薬品への譲渡が決まりました(事例⑤)。シミックホールディングスは2024年3月に上場廃止となり、同社のCMO事業は2023年に大日本印刷との合弁となっています(事例①)。米国のバイオCDMOのKBI Biopharmaを傘下に持つJSRも、2024年6月に上場廃止となりました(第4章)。
製薬会社の製造子会社は、親会社の生産体制の見直しに伴い、工場単位での会社分割と譲渡(事例①〜③)、子会社そのものの譲渡(事例⑤)の対象となっています。
独立系・オーナー系の非上場企業
製薬会社の工場の切り出しのほかに、独立系・オーナー系として始まった非上場の企業が取引の対象となった例があります。武州製薬は1998年に独立系の受託製造会社として設立され、ファンドの保有のもとで工場の取得を重ねてきました(事例④)。共和薬品工業は、Lupinが創業家の築いた会社と説明する大阪の後発医薬品メーカーで、2007年にLupinに取得されています(事例⑨)。いずれも現在はファンドまたは持株会社の傘下にあります。非上場の原薬・受託製造の企業は開示される情報が少なく、候補先の特定には公開データベースに頼らない調査が必要です。
関西への集積
大阪市中央区の道修町には、武田薬品(本社。グローバル本社は東京)、塩野義製薬(大阪本店・登記上の本社。グローバル本社は大阪市北区)、住友ファーマ(大阪本社)、田辺ファーマ(大阪の本社)、扶桑薬品工業(本社)が本社・本店を置き、田辺ファーマファクトリーも道修町に本店を置きます。生産の面でも、兵庫県・大阪府・滋賀県の医薬品の生産金額は全国の6〜8位です(第1章)。本稿の事例では、第一三共プロファーマの高槻工場(事例②)、武田薬品の大阪市淀川区のファーマシューティカルサイエンス部門(事例④)、兵庫県伊丹市のナガセ医薬品と大阪府摂津市のシオノギファーマ(事例⑥)、大阪に本社を置き兵庫県三田市に工場を持つ共和薬品工業(事例⑨)が関西の企業・拠点です。経済産業省のバイオ医薬品製造拠点等整備事業の2次公募では、シオノギファーマ(大阪府)、岩田硝子工業(大阪府)、大和特殊硝子(兵庫県)、ナティアス(兵庫県)が採択されています。
3. 国内の医薬品原薬・CDMO業界M&A事例 — 製薬会社の工場の切り出しと、国内外の買い手による取得
事例① シミック × 第一三共プロファーマの静岡工場ほか(2006〜2023年)— CDMOによる製薬会社の工場の取得
シミックは2006年9月、エスエス製薬が富山工場を会社分割で承継させた会社の株式の90%を22億円で取得しました。2010年4月には、第一三共プロファーマの静岡工場(静岡県島田市、1965年稼働、従業員390名)の事業・資産を承継した新設会社の全株式を57億円で取得しました。静岡工場は錠剤、カプセル、散剤、注射剤を製造しており、シミックは固形剤と注射剤のほぼ全剤形を受託できる体制を理由に挙げています。
その後も、2013年11月に田辺三菱製薬工場の足利工場(栃木県足利市、従業員279名)を承継した会社の全株式の取得契約を、2018年12月にアステラス製薬の生産子会社の西根工場(岩手県八幡平市、従業員約190名)を承継した会社の全株式の取得契約を結び、西根工場の取得は2019年6月1日に完了しました。足利工場と西根工場では、譲渡後も売り手の製品をシミックが受託製造するとされ、西根工場の従業員の雇用はシミックグループで継続するとされました。アステラス製薬は、外部の企業との提携による効率的な生産体制を理由に挙げています。
2023年4月17日には、大日本印刷がシミックの製造受託会社シミックCMOの株式の50.1%を取得し、シミックホールディングスが49.9%を保有する合弁会社とすることが発表され、合弁としての事業は同年6月に始まる予定とされました。両社は、大日本印刷の医薬品パッケージや原薬の製造技術と、シミックの製剤開発・製造支援の組み合わせを理由に挙げています。
これらの案件は、(i)CDMOが、製薬会社の工場を、会社分割で設けた新設会社の株式の取得によって引き受け、売り手の製品の受託製造を続けた、(ii)その製造受託会社の過半を、異業種の大手事業会社が取得した、という点を示しています。
事例② 太陽ホールディングス × 第一三共プロファーマの高槻工場(2019年)— 異業種の上場会社による製薬会社の工場の取得
エレクトロニクス事業を中心とする太陽ホールディングスは2019年1月31日、第一三共プロファーマの高槻工場(大阪府高槻市、1933年操業、固形剤・注射剤、従業員約330名)を会社分割で承継する新会社、太陽ファルマテックの全株式を取得する基本契約を結び、2019年10月1日に376億円で取得を完了しました。太陽ホールディングスは、医療・医薬品を第2の柱とする中期経営計画のもとで、子会社の太陽ファルマで医薬品製造販売業を始めたのに続いて製造拠点を持ち、第一三共グループ以外からの受託も獲得することを理由に挙げています。譲渡後も、第一三共グループ向けの製品を高槻工場で受託製造するとされました。
2026年3月には、KKRのファンドが間接的に保有する会社が、太陽ホールディングスの非公開化を目的とする公開買付けを1株4,750円で行う予定が公表されました。太陽ホールディングスは同年8月の開示で、公開買付けによる医療・医薬品事業への影響は特段想定していないとしています。同年10月9日の開示では、中国の競争法と日本の投資規制法令に基づく手続が完了していないため、公開買付けの開始の目途を2026年11月下旬頃としています。
本案件は、(i)製薬会社の国内の工場が、医薬品以外を本業とする上場会社に、会社分割と株式取得の形で譲渡された、(ii)買い手が、売り手からの受託の継続に加えて、売り手以外からの受託の獲得を理由に挙げた、という点を示しています。
事例③ アルフレッサファーマ × 第一三共プロファーマの秋田工場(2014〜2015年)— 原薬工場の医薬品卸グループへの譲渡
第一三共は2014年7月31日、第一三共プロファーマの秋田工場(秋田市、1981年稼働、原薬の能力は年約300トン、従業員約100名)の事業を会社分割で新設の完全子会社に承継させ、2015年4月1日にその全株式をアルフレッサホールディングスの子会社アルフレッサファーマに譲渡する基本合意を公表しました。価格は開示されていません。第一三共は、国内の5つの原薬工場の生産体制の見直しの中で、秋田工場の技術力と能力を最も生かせる形として譲渡を選んだとし、アルフレッサファーマは、製造事業の規模の拡大と収益基盤の強化、秋田工場を原薬の中核工場とすることを挙げています。譲渡後も、第一三共は自社製品の製造を新会社に委託し、従業員は原則として新会社で雇用を継続するとされました。
本案件は、(i)製薬会社が、国内の原薬工場の一つを、会社分割と株式譲渡で医薬品卸のグループの製造会社に譲渡した、(ii)売り手が原薬工場の体制の見直しを理由に挙げ、譲渡後も製造を委託する形をとった、という点を示しています。
事例④ 武州製薬 × エーザイの美里工場ほか(2013〜2022年)— 受託製造専業による工場の取得と、ファンドの間の株主の移転
武州製薬(埼玉県川越市)は2013年11月29日、エーザイの美里工場(埼玉県美里町、1981年稼働、従業員約210名)を事業譲渡で取得する契約を結び、2014年3月に取得しました。美里工場は2013年3月期に錠剤を約38億錠、注射剤を約4,000万本生産しており、エーザイは一部を除き同工場の製品の製造を武州製薬に委託し、希望する従業員は武州製薬に転籍するとしました。武州製薬は2017年2月28日、武田薬品が大阪市淀川区の十三地区に持つファーマシューティカルサイエンス部門(旧CMC研究センター)の一部(プロセス開発、製剤・試験法の開発、治験薬の製造等、従業員約200名)を、新設会社を通じて譲り受けると武田薬品とともに公表し、2022年3月には三和化学研究所の福島県会津若松市の工場(従業員133名)を事業譲渡で取得することを発表しています。
武州製薬の株主は、2014年に東京海上キャピタルのファンドから、Baring Private Equity Asiaのファンドに移りました(企業価値773億円)。2022年12月20日には、KKRのファンドがBPEA EQTのファンドから全株式を取得する契約が発表されました。BPEA EQTは、保有期間中に純売上が約70%、EBITDAが約50%増え、従業員が約1,600名となり、国内の拠点が4か所になったとしています。KKRは、注射剤への参入、生産能力の増強、品質への投資と、M&Aを含む成長を方針に挙げています。
これらの案件は、(i)独立系の受託製造会社が、製薬会社の工場と開発・治験薬の機能を、事業譲渡と会社分割の形で引き受けてきた、(ii)その受託製造会社の株主が、国内のファンドから海外のファンドへ、さらに別の海外のファンドへと移り、ファンドの保有のもとで拠点を増やした、という点を示しています。
事例⑤ 東和薬品 × 田辺ファーマファクトリー(2025〜2026年)— ファンド傘下の新薬メーカーによる製造子会社の譲渡
三菱ケミカルグループは2025年2月7日、田辺三菱製薬の全株式を、ベインキャピタルが助言するファンドが間接的に保有する会社に約5,100億円で譲渡すると発表しました。三菱ケミカルグループは、化学事業とのシナジーの低下と、研究開発に必要な投資がグループの下では制約されることを理由に挙げています。田辺三菱製薬は、その後、田辺ファーマに社名を変えています。
田辺ファーマと東和薬品は2026年7月3日、東和薬品が田辺ファーマファクトリーの全株式を取得し、あわせて17成分35品目の製造販売承認を承継する契約を結んだと発表しました。田辺ファーマファクトリーは大阪市中央区道修町に本店を置き、山口県の小野田工場(錠剤、カプセル、散剤、注射剤、原薬・中間体、治験薬)と福岡県の吉富工場を持ち、従業員は538名(2026年4月1日時点)、売上高は158億円(2026年3月期)です。小野田工場は2025年度に原薬を45トン生産し、田辺ファーマファクトリーは原薬を100か国超に輸出しています。価格は開示されておらず、東和薬品は負ののれんの発生を見込むとしています。株式の譲渡は2026年11月末、製造販売承認の承継は2027年4月以降の予定で、いずれも競争法上の手続の完了を条件としています。
田辺ファーマは、主要な製造拠点を持たない方針に転じ、研究開発と事業開発に注力するとし、譲渡後も両工場で製造している自社の製品の製造を委託するとしています。東和薬品は、国内の生産能力と安定供給の強化、原薬から製剤までの一貫生産、品目の統合、先発医薬品の企業の製造ノウハウの承継を理由に挙げています。後発医薬品のメーカーが製薬会社の工場を取得した例には、2013年に日医工がアステラス製薬の富士工場(静岡県富士市、従業員約370名)を承継した会社の全株式の取得で合意した案件もあります。
これらの案件は、(i)ファンドの傘下に入った新薬メーカーが、製造拠点を持たない方針のもとで、製造子会社を後発医薬品のメーカーに譲渡する、(ii)買い手が、工場とあわせて製造販売承認を承継し、品目の統合と原薬から製剤までの一貫生産を理由に挙げた、という点を示しています。
事例⑥ シオノギファーマ × ナガセ医薬品(2020〜2022年)— 製薬会社の製造子会社による、商社系の製造会社の取得
塩野義製薬は2018年4月23日、生産機能を担う100%子会社を設立し、医療用医薬品・治験薬の受託製造と分析試験等の受託も行うと発表し、同年10月にシオノギファーマ(大阪府摂津市)を設立しました。シオノギファーマは2020年8月31日、長瀬産業から、兵庫県伊丹市で抗がん剤や局所麻酔剤を製造し、注射剤を中心に受託製造を行うナガセ医薬品(1972年設立)の全株式を取得すると発表し、2022年4月1日に同社を吸収合併しました。塩野義製薬は、シオノギファーマがリーディングCDMOを目指し、両社の製造力とノウハウを合わせることを理由に挙げています。シオノギファーマは、2023年7月に抗菌薬の原薬の供給確保計画の認定を受け、経済産業省のバイオ医薬品製造拠点等整備事業でも製剤化・充填の拠点に採択されています。
本案件は、(i)製薬会社が生産機能を分社化した子会社が、受託製造を事業として掲げ、商社の傘下の注射剤の製造会社を取得した、(ii)取得した会社を吸収合併し、受託できる剤形を広げた、という点を示しています。
海外企業による日本での取得(Out-In)
海外のCDMO・原薬メーカー・後発医薬品メーカーと海外の投資ファンドは、日本で、外資系製薬の工場、製造受託会社、後発医薬品のメーカーを取得してきました。
事例⑦ Adragos Pharma × サノフィの川越工場(2022〜2023年)— 海外のCDMOによる外資系製薬の日本の工場の取得
ドイツのCDMOのAdragos Pharmaは2022年10月13日、サノフィの日本法人と、埼玉県川越市の製造拠点を取得する最終契約を結んだと発表しました。価格は開示されていません。同拠点は50年以上の製造の歴史を持ち、サノフィのもとで経口固形剤と無菌の液剤(アンプル)を製造し、日本とアジアの市場向けに包装、外観検査、再試験を行っていました。Adragos Pharmaは、従業員は全員が拠点に残るとし、サノフィの日本法人と長期の供給契約を結んで日本での戦略的パートナーになるとしています。同社の最高経営責任者は、日本は世界で最大級の魅力的な医薬品市場である一方、CDMOの活動は比較的未成熟であるとし、欧州・北米・日本の新規顧客の獲得を挙げました。取得は2023年3月1日に完了し、拠点はKawagoe Pharmaとして運営されています。Adragos Pharmaは、取得によって日本の専業の受託製造会社で3番目の規模になったと説明しています。
本案件は、(i)外資系製薬の日本の工場が、従業員の雇用と売り手との長期の供給契約を伴って、海外のCDMOに譲渡された、(ii)買い手が、日本のCDMOの市場の未成熟さと、売り手以外の新規顧客の獲得を理由に挙げた、という点を示しています。
事例⑧ Gujarat Themis Biosyn × 日本マイクロバイオファーマ(2026年)— インドの企業による国内の原薬メーカーの取得
ティーキャピタルパートナーズは2026年5月25日、同社が管理・運営し、または投資助言を行うファンドが保有する日本マイクロバイオファーマ(東京都中央区)の全株式を、インドのGujarat Themis Biosynが出資する買収目的会社に譲渡する契約を結んだと発表しました。Gujarat Themis Biosynの2026年5月22日の発表によると、対価は約215億円で、日本マイクロバイオファーマは発酵の分野で60年以上の経験を持ち、国内の3か所の拠点のうち2か所に米国FDAとPMDAの査察の実績があり、売上高は約95億円の見込み(Gujarat Themis Biosynが「FY26E」として示した推計値)です。Gujarat Themis Biosynは、発酵の能力の補完、P450酵素ライブラリー・プラスミドDNA・ADCの結合の技術、国内外の製薬会社との長年の関係を取得の理由に挙げています。日本マイクロバイオファーマは医薬品の研究開発、生産、販売を手がける会社で、2015年時点では三井物産が80%、東レが20%を保有し、2016年4月にアステラス製薬の清須工場(愛知県清須市)の事業を譲り受け、同工場の原薬を受託品として製造を続けるとされていました。インドのメディアは、Gujarat Themis Biosynが2026年9月に取得の完了を発表したと報じています。
本案件は、(i)商社系の原薬メーカーが、国内のファンドの保有を経て、インドの企業に譲渡された、(ii)対象会社は、製薬会社の原薬工場を事業譲受で引き受け、受託製造を続けてきた会社であった、という点を示しています。
事例⑨ Lupin × 共和薬品工業(2007〜2025年)ほか — 海外の後発医薬品メーカーの日本への参入とその後
インドのLupinは2007年10月、大阪に本社を置き兵庫県三田市に製造拠点を持つ後発医薬品メーカーの共和薬品工業(売上高74億円、2007年3月期)の過半の株式の取得を完了しました。Lupinは、日本での足場の確立と、共和薬品工業の開発・製造・販売網と自社の研究開発の組み合わせを理由に挙げています。Lupinは2019年11月11日、共和薬品工業の株式の99.82%を、ユニゾン・キャピタルのファンドに企業価値約574億円で譲渡すると発表し、主要な市場と戦略上の優先事項への集中を理由に挙げました。共和薬品工業の売上高は283億円(2019年3月期)でした。2025年7月には、共和薬品工業、日医工、T’sファーマ(旧武田テバファーマ)の3社の持株会社として、アンドファーマが発足しています。
ほかにも、イスラエルのTevaは2011年に大洋薬品工業を約10.9億ドルで取得し、2016年に武田薬品との合弁の武田テバファーマを設けましたが、武田薬品は2024年12月、保有する49%をTevaに譲渡すると発表し、同じ発表で、Tevaは全株式をジェイ・ウィル・パートナーズが運営するファンドが設立した会社に譲渡する予定とされました。Tevaの年次報告書によると、Tevaは2025年3月31日に同社を売却しています。インドのSun Pharmaは2019年1月、ポーラ・オルビスホールディングスからポーラファルマの全株式を1億円で取得し、ポーラ・オルビスホールディングスは譲渡までに約90億円の貸付金を放棄しました。
これらの案件は、(i)海外の後発医薬品メーカーが、製造拠点を持つ国内の後発医薬品メーカーを取得して日本に参入した、(ii)その後、海外の企業の方針の変更などから、国内のファンド等に再び譲渡された例がある、(iii)2025年には、共和薬品工業を含む後発医薬品のメーカー3社の持株会社が発足した、という点を示しています。
4. クロスボーダーの医薬品原薬・CDMO業界M&A事例 — 国内企業による海外での取得
国内で売却や提携を検討するオーナーにとっては、国内の事業会社が海外でどのようなCDMOを、どのような形で取得しているかが、自社が買い手からどう評価されるかを考える材料になります。国内外での買収を検討する事業会社にとっては、同業の投資の方向と取引の形の参照例になります。
事例⑩ 富士フイルム × 米国Merck(MSD)のバイオ医薬品受託事業(2011年)・Biogenのデンマーク工場(2019年)— 事業会社によるバイオCDMOの事業の取得と拡張
富士フイルムは2011年2月、米国MerckからDiosynth RTP(米国ノースカロライナ州)とMSD Biologics UK(英国)の全持分を取得すると発表しました。2019年3月には、Biogenのデンマーク・ヒレレドの製造拠点(従業員約800名)を運営する会社の全持分を約8.9億ドルで取得すると発表しています。その後、富士フイルムは2025年9月に、米国ノースカロライナ州ホリースプリングスの、計画総額32億ドルの工場の第1期を開所しました。富士フイルムは2025年6月にバイオCDMOのブランドをFUJIFILM Biotechnologiesに変え、過去15年の拡張と買収への投資は100億ドルを超えるとしています。バイオCDMOの売上高は2,541億円(2026年3月期、前期比15.8%増)で、2027年3月期はiPS細胞関連の事業を組み替えた後の基準で3,000億円を予想しています。
これらの案件は、(i)国内の事業会社が、海外の製薬会社のバイオ医薬品の受託製造事業と製造拠点を取得した、(ii)取得した拠点を足がかりに、海外での大型の設備投資を続けている、という点を示しています。
事例⑪ AGC × CMC Biologics(2016年)ほか — ガラス・化学の企業によるCDMOの取得と、米国拠点からの撤退
AGCは2016年8月にドイツのBiomeva、2016年12月にデンマーク・米国に拠点を持つCMC Biologics(従業員約530名)を約600億円で取得すると発表し(2017年1月に子会社化の予定)、2019年にスペインの合成原薬の工場を、2020年にAstraZenecaの米国コロラド州ボルダーの工場とイタリアのMolMed(公開買付けの総額は100%取得時で2.4億ユーロ)を、2021年にNovartisの遺伝子治療の米国コロラド州ロングモントの施設を取得しました。
AGCは2025年8月1日、コロラド州のボルダーとロングモントの拠点から撤退し、事業の譲渡の検討を始めると公表しました。ライフサイエンス事業の売上高は2025年に1,331億円で、営業損失は223億円です。2026年5月の資料では、コロラド拠点の閉鎖で2026年の赤字が大きく縮小する見通しを示しています。
これらの案件は、(i)国内の素材メーカーが、海外のCDMOと製薬会社の工場の取得を重ねてバイオ医薬品と合成原薬の受託製造を広げた、(ii)取得した拠点の一部から、数年後に撤退した、という点を示しています。
事例⑫ 味の素 × Althea Technologies(2013年)・Forge Biologics(2023年)— 食品メーカーによるCDMOの取得
味の素は2013年4月、米国のCDMOのAltheaの全株式を約1.75億ドル(売上高は約5,300万ドル、2012年)で取得しました。2023年11月には、遺伝子治療の米国のCDMOのForge Biologicsの全持分を約5.54億ドルで取得すると発表しています。味の素は2026年8月の資料で、増収に伴いForge Biologicsの事業利益の赤字が縮小したとしています。
これらの案件は、(i)国内の食品メーカーが、米国のCDMOを2013年と2023年の2回にわたって取得した、(ii)2023年の取得の対象は、遺伝子治療の分野のCDMOであった、という点を示しています。
このほか、旭化成は2022年に米国のバイオCDMOのBionovaを、テルモは2025年9月にWuXi Biologicsのドイツ・レバークーゼンの製剤工場を取得しています。JSRは2015年に米国のKBI Biopharmaを取得しました。JSRはまた、2025年11月に、傘下のCrown Bioscienceを、カーライル傘下の企業に譲渡する契約を結んでいます。
5. 医薬品原薬・CDMO業界M&Aで買い手が確認する業界固有の要素
医薬品原薬・CDMO業界M&Aでは、財務数値に加えて、業界に固有の要素が確認されます。事例の買い手が公表した取得の理由と、取引の経過をもとに、設備・剤形、受託の継続と顧客、承認・人材の3つに整理します。
- 設備・剤形 — どの剤形・モダリティの設備を持ち、どれだけの能力があるかです。事例①のシミックは固形剤と注射剤のほぼ全剤形を受託できる体制を、事例⑥のシオノギファーマは受託できる剤形の拡大を、事例⑤の東和薬品は原薬から製剤までの一貫生産を、取得の理由に挙げています。事例③では原薬の能力(年約300トン)が、事例④では錠剤・注射剤の生産量が開示されています。
- 受託の継続と顧客 — 売り手からの受託がどれだけ続き、売り手以外の顧客をどれだけ獲得できるかです。事例①(足利・西根)、②、③、④(美里)、⑤、⑧(清須)では、譲渡後も売り手の製品の製造を譲受先に委託するとされましたが、受託の期間は開示されていません。事例②の太陽ホールディングスは、第一三共グループ以外からの受託の獲得を理由に挙げています。事例⑪のAGCは、取得した米国の拠点から撤退しています。
- 承認・人材 — 製造販売承認の承継と、製造・品質の人材です。事例⑤では工場とあわせて17成分35品目の製造販売承認が承継され、東和薬品は先発医薬品の企業の製造ノウハウの承継を挙げています。工場の譲渡では、従業員の雇用の継続や譲受先への転籍が示された例があります(事例①の西根、③、④の美里)。
6. 医薬品原薬・CDMO業界の買い手の類型
本稿の事例に表れた買い手は、大きく4つに分けられます。類型ごとに、取得の理由と取引の形が異なります。
- 国内のCDMO・製薬会社・後発医薬品メーカー — シミック(事例①)、アルフレッサファーマ(事例③)、武州製薬(事例④)、東和薬品(事例⑤)、シオノギファーマ(事例⑥)。生産能力の拡大と受託できる剤形の拡大を理由に、製薬会社の工場や製造子会社、他社の製造会社を取得しています。
- 医薬品以外を本業とする国内の事業会社 — 太陽ホールディングス(事例②)、大日本印刷(事例①)、富士フイルム(事例⑩)、AGC(事例⑪)、味の素(事例⑫)。国内の工場の取得や、海外のCDMOの取得で受託製造に参入し、事業を広げています。
- 国内外の投資ファンド — Baring Private Equity AsiaとKKR(事例④)、ベインキャピタル(事例⑤)、ティーキャピタルパートナーズ(事例⑧)、ユニゾン・キャピタル(事例⑨)。受託製造会社、新薬メーカー、後発医薬品メーカーを取得し、別のファンドや海外企業への譲渡で出口をとった例があります(事例④⑧)。
- 海外の事業会社 — Adragos Pharma(事例⑦)、Gujarat Themis Biosyn(事例⑧)、Lupin・Teva・Sun Pharma(事例⑨)。外資系製薬の日本の工場、国内の原薬メーカー、後発医薬品メーカーを取得しています。
7. 買収・提携を検討する事業会社・投資ファンドへの示唆
本稿の事例から、医薬品原薬・CDMOの買収・提携を検討する事業会社と投資ファンドにとっての論点を3つに整理します。
① 対象先の所在
事例の対象先は、大きく4つに分かれます。1つ目は製薬会社の国内の工場と製造子会社で、第一三共プロファーマ、田辺三菱製薬工場、アステラス製薬、エーザイ、武田薬品の工場・機能が譲渡され(事例①〜④)、田辺ファーマの製造子会社の譲渡が決まっています(事例⑤)。外資系製薬の日本の工場も、海外のCDMOに譲渡されています(事例⑦)。2つ目はファンドや商社が保有する受託製造会社・原薬メーカーで、武州製薬(事例④)と日本マイクロバイオファーマ(事例⑧)の株主が移り、長瀬産業の傘下のナガセ医薬品は製薬会社の製造子会社に譲渡されました(事例⑥)。3つ目は後発医薬品のメーカーで、海外の後発医薬品メーカーが取得し、その後に国内のファンド等に譲渡された例があります(事例⑨)。4つ目は海外のCDMOと製薬会社の製造拠点で、国内の事業会社が取得しています(事例⑩⑪⑫)。
当社は、国内の独立系の原薬・受託製造の企業は開示される情報が少なく、候補先の特定には公開データベースに頼らない調査と、オーナーや親会社への直接の打診が必要と考えています。
② 取引の形
製薬会社の工場では、会社分割で新設会社に工場の事業を承継させ、その全株式を譲渡する形(事例①②③)と、事業譲渡(事例④)がとられ、譲渡後も売り手が製造を委託するとされました。製造子会社そのものの譲渡では、製造販売承認の承継を組み合わせた例があります(事例⑤)。CDMOの株主の変更では、ファンドから別のファンドへ(事例④)、ファンドから海外企業が出資する会社へ(事例⑧)の全株式の譲渡と、事業会社による過半の取得(事例①の大日本印刷)があります。
価格が開示された例では、事例①の静岡工場を承継した会社の株式の取得価額は57億円、事例②の高槻工場を承継した会社の株式の取得価額は376億円で、事例④の武州製薬の2014年の取引は企業価値で773億円でした。事例⑧の対価は約215億円とされています。本稿の事例では、足利工場、西根工場、秋田工場、田辺ファーマファクトリーの取引で、価格が開示されていません。
③ 売り手が重視する点
第一三共は原薬工場の生産体制の見直しの中で、工場の技術力と能力を最も生かせる形として譲渡を選んだとし(事例③)、アステラス製薬は外部の企業との提携による効率的な生産体制を(事例①)、田辺ファーマは製造拠点を持たず研究開発と事業開発に注力する方針を(事例⑤)、理由に挙げています。これらの売り手は、譲渡後も自社製品の製造を譲受先に委託するとしており(事例①②③⑤)、秋田工場では従業員の雇用の継続も示されました(事例③)。
これらの事実からは、事例の売り手が、自社製品の供給の継続と、工場の技術・能力を生かせる受け皿を、譲渡先を選ぶうえでの条件としていたことがうかがえます。
8. 医薬品原薬・受託製造の企業のオーナー・親会社が検討すべき論点
売却や資本提携を検討するオーナー・親会社の側では、次の3点が検討の出発点になります。
① 買い手候補の範囲
国内のCDMO・製薬会社・後発医薬品メーカー(事例①③④⑤⑥)に加えて、医薬品以外を本業とする国内の事業会社(事例①②)、国内外の投資ファンド(事例④⑤⑧⑨)、海外のCDMO・後発医薬品メーカー等の事業会社(事例⑦⑧⑨)が買い手となっています。買い手候補は、これらの先の中から、自社の設備・剤形・顧客と補完関係にある企業を洗い出すことから検討します。
② 自社の資産の整理
第5章の3つの要素(設備・剤形、受託の継続と顧客、承認・人材)ごとに、自社のどの資産が、どの買い手にとって補完になるかを整理しておくと、買い手候補との協議で評価の根拠を示すことができます。とくに、剤形別の能力と稼働率、顧客別の受託の売上と契約の期間、査察と製造販売承認の状況、原薬の調達先は、買い手の確認の対象になります。
③ 取引の形と時期
第7章②の取引の形のうち、どれが適するかは、承継の意向、主要な受託先との関係、譲渡後の経営への関与の希望によって変わります。後発医薬品では、2025年11月に事業再編等の計画の認定と、5年の時限措置の基金による補助の制度が始まりました(第1章)。抗菌薬の原薬では経済安全保障推進法に基づく支援が続いています。取引の時期は、これらの制度の期間と、自社の受託の見通しとあわせて検討することになります。
9. Syntax Partnersができること
Syntax Partnersは、M&Aのファイナンシャル・アドバイザー(FA)専業のアドバイザリーファームです。一つの案件では、売り手・買い手のいずれか一方のみを支援します。医薬品原薬・CDMOとその周辺の分野で、国内案件とクロスボーダー案件の双方に対応しています。
買い手側の支援
国内外での買収を検討される事業会社・投資ファンドに対し、貴社の戦略に基づく対象候補の調査・リスト化から、オーナー・親会社への直接の打診、交渉、取引の実行までを支援します。投資ファンドのアドオン買収や、大手グループからの切り出し案件の候補探索にも対応します。医薬品原薬・CDMOの分野では、製薬会社の工場・製造子会社や、公開情報の少ない独立系の原薬・受託製造の企業が対象となるため、候補先の調査とオーナー・親会社への直接のアプローチを当社が担います。海外の対象先については、日英を含む多言語で対応します。
売り手側の支援
売主様・オーナー様の利益を最大化するアドバイザーとして、事業承継と売却を支援します。投資ファンドが保有する企業の売却も対象とします。譲渡先の候補は国内のCDMO・製薬会社に限らず、隣接分野の事業会社、ファンドに加えて、海外のCDMO・原薬メーカーなどの戦略買い手も対象とします。
- 買い手候補の探索:国内のCDMO・製薬会社・後発医薬品メーカー、隣接分野の事業会社、ファンド、海外の戦略買い手まで、貴社の設備・剤形・顧客と補完関係にある先を洗い出し、直接アプローチします。
- 業界理解に基づく取引支援:剤形別の設備と能力、受託の継続と顧客の構成、製造販売承認と査察の状況など、医薬品原薬・CDMO業界固有の要素を踏まえて、買い手候補への説明と条件の協議を進めます。
- オーナーの意向を反映した交渉:従業員の雇用、主要な受託先との関係、創業家の関与のあり方など、オーナーが重視する条件を明文化し、買い手候補との交渉に反映します。
事業承継、グループ再編、海外の買い手への譲渡、国内外での買収を検討されている経営者・オーナーの皆様からのご相談を承ります。初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。
本稿は、各社の公式発表・IR資料等の公開情報と、官公庁の統計・資料(一部、報道を含む)に基づき、Syntax Partners, Inc. が業界動向を整理したものです。