日本企業に必要な「買い手起点」 M&A ──米国の“常識”から学ぶ戦略

日本のM&A市場では、8~9割が売り手起点といわれる。案件が市場に出てくる、すなわち売り手/売り手FAから打診されるのを待ち、そこから是々非々で検討を始める──これがごく一般的な流れだ。

M&A in the United States image

一方、米国では事情がまったく異なる。ゴールドマンサックスのレポートによれば、買い手起点(buyer-initiated)のM&Aは全体の約70%。さらに、2017年以降、最初にアプローチした買い手が落札する確率は平均60%超、オークションにならなければ約70%というデータもある。
だが、これは「米国で進んでいる」というより、戦略的M&Aに長けた米国企業にとっては常識だ。成長戦略の一環として、ターゲット企業に自らアプローチし、競争が激化する前に動く──それが当たり前の発想だ。


日本において、買い手起点のM&Aが少ない背景には、オーガニック成長を重視する企業文化や、M&Aに割ける人的リソースの不足がある。特に海外市場では、主要プレーヤーの把握すら難しいという声も多い。

日本企業として代表的なM&A巧者として知られる日本電産(現ニデック)の永守重信氏は、「毎年、買収したい先のオーナーに手紙を書く」と語っている。これは理想的な姿勢だが、多くの企業にとって現実に模倣することは簡単ではないかもしれない。多くの場合、M&Aは本業の延長線上にあり、専任チームを持たないケースも多い。特に海外市場では、主要プレーヤーの把握すら難しい、というのが現実的なところだろう。

では、どうすればよいのか。答えの一つは、アドバイザリーの活用だ。海外市場でのターゲット探索や初期交渉、バリュエーションや条件交渉──こうしたプロセスを外部の専門家に委ねることで、リソース不足を補い、戦略的な買収を実現できる。


世界のM&A市場は、**「待ち」ではなく「攻め」**の姿勢を求めている。

  • 自社戦略に合致する企業に積極的にアプローチする
  • 長期的な関係構築を意識する
  • 必要に応じて専門家を活用する

M&A先進国である米国の常識を、日本企業も自らの成長戦略に取り込む時だ。