― 最新動向の分析と2026年に向けた示唆 ―

2025年にアジア太平洋地域(APAC)で日本企業が関与した機械業界のクロスボーダー M&A は10件となった。
台湾・インド・中国を中心に事業統合・子会社化・持分譲渡が発生しており、機械業界特有の「生産拠点の最適化」「アフターサービス網の再編」「省力化・自動化への対応」といったテーマが色濃く表れた一年だった。
台湾:アフターサービス・据付需要の追い風を受けた子会社化
台湾では、新明和工業が台湾子会社を通じて機械式駐車設備メーカーを子会社化した。駐車設備は都市化・高密度化が進むアジアで需要が底堅く、据付・保守サービスまで含めたライフサイクルビジネスの確立が狙いとみられる。
台湾は機械産業のサプライチェーンが比較的安定しており、機械・精密部品メーカーにとって生産・販売両面の拠点として重要性が高まっている。
インド:販売会社の統合による市場攻略の加速
島津製作所は、インドで計測機器・医用機器を扱う販売会社 2社を統合した。
インドは製造業の現地化と医療インフラ拡充を背景に市場が拡大しており、販売網の効率化・統合によって営業体制の強化と市場浸透スピードの向上を狙った動きといえる。
機械業界では、販売網・アフターサービス網の再編が投資回収の鍵となることが多く、今回もその典型例である。
中国:事業再編、子会社合併、撤退が並行して進む
中国関連の機械業界案件は最も多く計 3件あり、合併・撤退・買収が混在する再編色の濃い動きとなった。
● アズビル:現地法人 2社の合併
省エネ支援・計測機器の領域で現地法人同士を統合。ガバナンス簡素化と生産性向上が目的。
● 加藤製作所:中国子会社の全持分を売却
油圧ショベル等を製造する子会社を売却。建機市場の競争激化・価格下落・ローカルメーカー台頭を踏まえた判断と解釈できる。
● ニデック:中国企業の圧縮機メーカーを買収
スクロールコンプレッサーメーカーを取り込み、HVAC(空調)や省エネソリューション領域を強化。
中国の機械市場における
- 需要は巨大
- 市場はコモディティ化
- 技術差別化は必須
という状況のなか、日本企業は「撤退(加藤)」「集約(アズビル)」「攻め(ニデック)」の三者三様の選択を取っている。
その他地域(ベトナム・マレーシアなど):補完的な生産・販売再配置
集計データによれば、中国・台湾・インドに次いで少数ながら ASEAN での動きも見られた。
- ベトナム:事業譲渡(パッケージ工程等)
- マレーシア:補完的な装置販売・拠点見直し
機械業界は「生産拠点の最適配置」が重要テーマであり、
中国集中リスクの分散 → ASEANへの補完投資
という構図が明確になっている。
トレンド整理:2025年の機械業界APAC M&Aから読み取れる構造
2025年のAPAC機械業界では、以下の傾向が際立つ。
1. 生産拠点・販売網の再編が主要テーマに
- 中国:合併・撤退・一部領域での積極的買収
- インド:販売会社統合
- 台湾:現地子会社を通じた事業取得
機械業界は固定資産・設備・サービス網の最適化が重要で、再編は不可避。
2. サービス領域の拡大・LTV(ライフタイムバリュー)獲得が投資判断の軸に
駐車設備、医療機器、計測装置など、据付→保守→更新のサイクルがある領域での強化が進んでいる。
3. 中国市場は“選択と集中”が本格化
- コモディティ化した領域(建機)は撤退
- 高効率機器・精密領域(圧縮機)は積極投資
- 生産性改善(合併・集約)も進む
4. ASEANへの工程分散が継続
中国一極集中のリスクヘッジとして、ベトナム・インド・マレーシアへ工程を分散する動きが強まっている。
注目事例
新明和工業(台湾)
台湾の機械式駐車設備メーカーを子会社化。現地での保守・サービス網の確立が狙い。
島津製作所(インド)
計測機器・医用機器販売会社 2社を統合。市場成長への対応力を高めた。
加藤製作所(中国)
建機製造子会社の売却。激化する中国建機市場の構造変化を踏まえた撤退。
ニデック(中国)
圧縮機メーカーを買収し、HVAC・省エネ領域の強化を推進。
アズビル(中国)
現地法人の合併による組織効率化と統治強化。
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