― 最新動向の分析と2026年に向けた示唆 ―

2025年にアジア太平洋地域(APAC)で日本企業が関与したヘルスケア領域のクロスボーダー M&A は24件となり、医薬品製造販売、消費者向けヘルスケア、デジタルヘルス、医療周辺サービスまで広範な領域で投資が進んだ。 ベトナム・フィリピンなど成長市場での販売網強化と、インド・韓国でのデジタルヘルス/R&D連携を組み合わせる動きが特徴となり、国・地域によって異なる成長軸が明確に表れた一年だった。
ベトナム:医薬品・OTC・生活衛生領域への投資が加速
あすか製薬HD(4886)は、医薬品販売企業 Hataphar社 の株式取得を通じて、医療用医薬品の現地流通体制を強化した。また ライオン(4912) は、医薬品・生活衛生領域を扱う メラップライオン の追加取得により子会社化を進め、OTC・パーソナルケア領域の存在感を高めた。
ベトナムは人口増・生活衛生市場の急拡大を背景に、現地企業の取り込み型M&A が目立つ市場となった。
フィリピン:医薬品販売事業の拡大を目的とした投資が進行
あすか製薬HDは、製薬企業 MedChoice Pharma の親会社株式を取得し、成長余地の大きいフィリピン医薬品市場でのプレゼンス拡大を図った。医療アクセス改善を背景に、販売網と製品ラインアップの強化が投資の中心となった。
インド:デジタルヘルス・ウェルネス領域への出資
エレコム(6750)は、デジタルヘルス企業 Phasorz Technologies(“MediBuddy”運営) に出資し、健康管理・オンライン診療など成長分野へのアクセスを確保した。インドは遠隔医療・保険連動型ヘルスケアの浸透が進んでおり、日本企業の小口投資によるオプション確保が続いている。
韓国:創薬・製剤技術を補完するR&D連携型の投資が目立つ
ラクオリア創薬(4579)は、製薬企業 HK inno.N との協働強化を目的とした資金調達ラウンドに参加し()、開発ラインの補完を進めた。韓国は創薬技術とバイオ医薬の存在感が強く、日本企業にとってR&D機能の補完型M&Aが中心となっている。
注目事例(2025年)
あすか製薬HD(ベトナム/フィリピン)
Hataphar社および MedChoice Pharma 関連会社の取得を通じ、ASEANにおける医薬品販売ネットワークを広く強化。
ライオン(ベトナム)
メラップライオンの追加取得により、OTC・衛生用品領域での足場を固めた。
エレコム(インド)
デジタルヘルスアプリ「メディバディ」運営企業への出資により、医療DX領域に接続。
ラクオリア創薬(韓国)
HK inno.Nとの連携強化を通じ、開発ポートフォリオの補完とAPAC創薬エコシステムへの接続を進めた。
2025年のヘルスケアM&Aに見られた構造的示唆
1. ASEANでは“医薬品販売 × OTC × 日用品”の地場統合が主軸に
現地流通網・営業網、ブランドの取り込みを目的とした買収が中心。
2. インドでは「デジタルヘルス×保険」の成長軸にアクセスする小口出資が拡大
オンライン診療、ヘルスケアアプリ、ウェルネス市場が急成長。
3. 韓国は“R&D連携型”のM&A・資本提携が主流
製剤・創薬技術を補完する動きが続く。
4. 国・市場の成熟度に応じてM&Aの目的が明確に三分化
成長取り込み(ASEAN)/R&D補完(韓国)/未来オプション確保(インド)という明確な構造が確認された。
マクロ背景と評価環境(ヘルスケア特有の視点)
2025年のヘルスケア領域では、売買双方に共通するマクロ環境と評価上の特徴が鮮明となった。
1. 医薬品・ヘルスケア支出の拡大がAPAC全体の投資基調を下支え
- ベトナム・フィリピンなど新興国では医薬品アクセス改善と所得拡大が進行。
- OTC/生活衛生市場は人口増に伴い安定成長。
→ M&Aでは「需要の底堅さ」が高い評価を支える要因に。
2. 規制とガバナンス要件がバリュエーションに影響
- 医薬品販売ライセンスや薬事承認は、投資判断において大きな影響を与える。
- 各国規制の複雑性を踏まえ、“規制クリア済み企業を買う”というM&Aの意義がより強まった。
3. 医療DXの進展により、データ連携やSaaSモデルへの評価が上昇
- デジタルヘルス企業は利用者データや保険連携のポテンシャルが重視される。
- 技術取得型M&Aは売上よりもユーザーベース・API連携能力が価値評価の中心に。
4. R&D投資の高騰とリスク分散が資本提携の増加を後押し
- 自社単独での創薬はリスクが高いため、韓国・台湾バイオ企業との補完関係が深化。
- 共同開発前提の小規模出資がM&Aの“前段階”として定着。
→ 総じて、規制対応・販売網・技術補完・データアクセスがヘルスケアM&Aの主要な評価軸となっている。
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