【エネルギー・資源業界】アジア太平洋クロスボーダー M&A レビュー:2025年の最新動向と2026年への示唆

M&A

2025年にアジア太平洋(APAC)地域で日本企業が関与したエネルギー・資源領域のクロスボーダー M&A は23件となり、金属資源、再生可能エネルギー、LNGインフラ、リサイクル素材、インフラ開発と多様な領域で取引が発生した。
フィリピン・インド・オーストラリア・ベトナムなどで、資源確保・再エネ拡大・インフラ投資・脱炭素移行に向けた戦略的動きが顕著となった一年だった。


フィリピン:金属資源・LNGインフラで日系企業の存在感が拡大

2025年のフィリピンは、金属資源とエネルギーインフラの両面で動きが集中した。

住友金属鉱山(5713) は、ニッケル製錬事業を行う コーラルベイニッケル社 を完全子会社化し、EV電池向けニッケル供給網の安定確保に踏み込んだ。
さらに、東京ガス(9531) は、浮体式LNG基地を所有・運営する FGEN LNG社(フィリピン) の株式20%を取得し、LNG供給網と燃料転換需要の取り込みを強化した。

フィリピンは、

  • 再エネ導入の遅れ
  • 電力安定供給の課題
  • 金属資源の豊富さ
    を背景に、“資源 × インフラ” の両面で日本企業の投資余地が拡大している。

インド:大型再エネ事業への投資が進行

インドでは、再エネ分野での大型投資が見られた。

オリックス(8591) は、インドを代表する再生可能エネルギー企業 Greenko Energy Holdings を傘下に持つ事業群の一部を再編・売却する案件に関与し、同国の再エネ事業の経営基盤を再構築した。

インドは世界最大級の再生可能エネルギー投資市場であり、

  • 太陽光
  • 風力
  • 蓄電池
  • グリーン水素
    領域で日本企業の参入可能性が高い。

オーストラリア:エネルギー・インフラ開発への本格的関与

双日は、豪州の大規模インフラ開発会社を買収し、エネルギー・資源輸送に関連する基盤インフラ事業へのアクセスを強めた。
オーストラリアは、鉄鉱石・LNG・石炭に加え、再エネインフラの拡大も進み、資源 × インフラ × サプライチェーン を統合的に押さえる動きが進んでいる。


ベトナム:金属リサイクル・循環型素材への投資が拡大

丸紅(8002) は、アルミリサイクル事業を展開する NM2社(ベトナム) に出資し、循環型素材のサプライチェーンを強化した。
脱炭素や素材コスト上昇が進む中、リサイクル金属の取得・地場化 はエネルギー・資源領域の投資テーマとして重要性を増している。


注目事例(2025年)

住友金属鉱山(フィリピン:コーラルベイニッケル社の完全子会社化)

EV電池向けニッケル供給網確保に向けた資源投資の象徴的案件。

東京ガス(フィリピン:FGEN LNG社の株式取得)

LNGインフラの供給安定化と燃料転換需要取り込みを目的とする戦略投資。

オリックス(インド:Greenko関連事業)

インド再エネ分野の基盤企業に関与し、再生可能エネルギーポートフォリオ再編を推進。

双日(オーストラリア:大規模インフラ企業買収)

エネルギー・資源輸送を支える基盤インフラに直接アクセス。

丸紅(ベトナム:アルミリサイクルのNM2社へ出資)

脱炭素・循環型経済を見据えた素材供給体制の強化。


2025年のエネルギー・資源M&Aに見られた構造的示唆

1. “脱炭素 × 資源確保”の二軸で投資が加速

  • ニッケルなどEV向け金属の争奪
  • LNG基地・再エネの基盤インフラ投資
    資源と脱炭素の両テーマが強力に重なっている。

2. ASEANでは「エネルギー安定供給 × 民間主導インフラ化」が進む

フィリピン・ベトナムでのLNG・金属リサイクルなど、
生活・産業エネルギーの安定供給確保型のM&A が目立つ。

3. インド・オーストラリアは“量 × インフラ”の二大市場

再エネ/鉱物資源の両面で規模が大きく、
日本企業の長期アセット投資に適した市場性が高い。

4. リサイクル素材・循環型経済が新たな資源テーマへ

金属・素材の再利用は、資源価格変動リスクの抑制手段として有効で、
2026年以降は「再エネ × リサイクル × 脱炭素」の複合領域でのM&Aが増加すると見られる。


マクロ背景と評価環境(エネルギー・資源領域の特徴)

1. 資源価格の変動と長期契約の重要性

ニッケル・銅・LNGなど主要リソースは、地政学要因と市場需給により変動が大きい。
M&Aでは、資源取得権/長期オフテイク契約の有無が価値を大きく左右する。

2. 脱炭素規制により、再エネ・リサイクル領域の評価が上昇

各国の排出規制強化により、

  • 再エネ発電
  • 省エネインフラ
  • 金属リサイクル
    は評価倍率が上がる傾向がある。

3. インフラ案件では“運営実績”が価値の中心

LNG基地・送電・発電等のインフラでは、稼働率/運営年数/規制適合状況が重要。

4. 新興国では規制安定性が投資の前提条件

ASEANは高成長だが、燃料政策や規制の変動リスクが高く、
「パートナー選定」や「契約の強度」がM&A成功の鍵となる。

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