【金融業界】アジア太平洋クロスボーダー M&A レビュー:2025年の最新動向と2026年への示唆

2025年にアジア太平洋(APAC)地域で日本企業が関与した金融領域のクロスボーダー M&A は35件となり、自動車金融、デジタル金融(フィンテック)、決済、デジタル資産、生命保険など幅広いテーマで再編が進んだ。 ASEANを中心に「金融 × デジタルプラットフォーム」が強化される一方、韓国ではデジタル資産、ベトナムでは生命保険など多様な金融業態が対象となり、国ごとに異なる経済・規制環境を踏まえた投資・再編の構造が鮮明となった。


インド:メガバンクの連続投資によるエコシステム接続が進展

インドでは、日本の大手金融機関による資本参加・買収が同一年に相次いだ。SMBCグループは、民間商業銀行YES BANKの株式を取得し、約2,400億円を投じて持分法適用会社化を行った。みずほ証券は、総合金融サービスを提供するAvendus Capitalの株式60%超を取得し、成長企業の資金調達・PEアドバイザリー・ウェルスマネジメントにまたがる投資銀行プラットフォームへのアクセスを獲得した。三菱UFJ銀行は、ノンバンク大手Shriram Finance Limitedに20%を出資し、消費者・中小事業者向けを広くカバーするクレジット供給基盤への接続を強化した。銀行・投資銀行・ノンバンクという異なるチャネルへの同時接続により、日本の大手行はインドの金融エコシステムに多面的に到達しており、日印経済圏の結びつきが一段と深まる象徴的な動きとなった。インドの厚いクレジット需要と資本市場の拡張を背景に、与信・市場・アドバイザリーの相互補完が機能し、今後も案件創出の加速が見込まれる。

シンガポール:モビリティサービスと金融の統合が進展

シンガポールでは、デジタルプラットフォームと金融サービスの融合が進んだ。
住友三井オートサービス(SMAS) は、カーシェア・レンタカー事業の Tribecar に出資し、モビリティ領域における金融機能(決済・サブスクリプション・リース)の拡張につなげた。同国は金融DXの規制環境が整備されているため、”モビリティ × 金融” の統合モデルが確立しやすい市場である。


韓国:デジタル資産を含む新金融インフラへのアクセス

韓国はデジタル証券・暗号資産など新金融領域の制度整備が進んでおり、日本企業によるピンポイント投資が見られた。GFA(8783) は、デジタル資産取引所 BDAN に出資し、デジタル証券・暗号資産の取引基盤へのアクセスを確保した。

伝統的な金融領域より、**次世代インフラ(デジタル資産・デジタル証券)**へのアプローチが中心となっている点が特徴である。


インドネシア:金融包摂とデジタルバンキングが牽引

インドネシアでは、若年層の多さ・EC市場の拡大を背景にデジタル金融の成長が続く。

独立系VCの W は、移民労働者向けオンライン銀行 Youji Bank に出資し、金融包摂領域へのアクセスを強化した。
同国では、銀行口座保有率の改善、給与・送金領域のデジタル化が進み、“金融 × 生活インフラ” の投資テーマが魅力を増している。


マレーシア:自動車×金融(オートローン)の事業基盤が拡大

マレーシアでは、自動車販売金融の領域で再編が進んだ。
ジャックス(8584) は、中古車プラットフォーム Carsome の金融子会社 Carsome Capital に出資し、自動車金融網を拡張した。
自動車ECの普及に伴い、“車両 × 与信 × 決済”が統合されたビジネスモデルが広がっている。


タイ:中古車金融・ディーラーファイナンスの強化

タイでは、自動車金融への投資が引き続き活発だった。
伊藤忠商事(8001)とプレミアグループ(7199) は、自動車販売金融会社 Eastern Commercial Leasing(ECL) に出資し、ASEAN最大級の中古車市場での金融サービス基盤を拡大した。
タイは自動車生産・中古車流通が大きく、金融利幅も確保しやすい市場であることを背景にした取組と見られる。


ベトナム:生命保険市場への本格参入と金融事業の拡充

2025年の金融領域で最も象徴的な事例の一つが、朝日生命による MVI生命(ベトナム)の買収である。

朝日生命は、カナダの Manulife グループから MVI Life(旧 Aviva Vietnam)を100%取得することで合意し、海外生命保険事業への本格参入を開始した。

  • 買収額:約1.7億USD(約263億円)
  • MVI生命の24年純資産:約1.34億USD
  • 保険料収入:約0.93億USD
  • 完全買収後:朝日生命100%保有

朝日生命にとって初の海外生命保険会社M&Aであり、国内市場縮小を背景に、ASEANへの長期成長軸を確保する戦略的投資と位置づけられる。
ベトナムは生命保険の浸透率がまだ低く、中長期での市場拡大が期待できる数少ないアジア市場の一つである。


注目事例(2025年)

・住友三井オートサービス(シンガポール:Tribecar)

モビリティプラットフォーム × 金融の一体化を進める戦略投資。

・GFA(韓国:BDAN)

デジタル資産取引インフラへのアクセスを確保。

・ジャックス(マレーシア:Carsome Capital)

中古車ECと金融機能を統合する補完的投資。

・伊藤忠商事 × プレミアグループ(タイ:ECL)

中古車販売金融の基盤強化と東南アジア市場への浸透を加速。

・朝日生命(ベトナム:MVI生命の買収)

Manulife から MVI Life を約1.7億USDで買収。海外保険業M&Aの第一歩としてベトナム市場へ本格進出。


2025年の金融M&Aに見られた構造的示唆

1. 日本の大手行がインドの金融エコシステムへ多面的に接続

SMBCグループによるYES BANKへの出資、みずほ証券によるAvendus Capitalの買収、三菱UFJ銀行によるShriram Financeへの出資が同一年に相次ぎ、銀行・投資銀行・ノンバンクという異なるレイヤーを三行が網羅した。インドの厚いクレジット需要と資本市場の拡大を背景に、日本の大手行が同時に中核プレイヤーへの接続を進めた点は象徴的で、日印間の資金循環が次の段階へ進む転換点になったと考えられる。


2. 「金融 × デジタルプラットフォーム」の統合が主戦場へ

モビリティ・EC・コンテンツ企業に対する出資が増え、課金・決済・ローンが統合される傾向。

3. ASEANでは“金融包摂 × フィンテック”が成長ドライバー

インドネシア・マレーシア・タイなど、デジタル金融の広がりが日本企業の投資余地を拡大。

4. 韓国・台湾など規制先進国では次世代金融インフラが中心テーマ

デジタル資産、オンライン証券、API基盤など新カテゴリーへの投資が増加。

5. 投資目的は三分化しつつ明確

  • 成長市場(インド・ASEAN):参入・拡大型
  • 先進市場(韓国):金融インフラ型
  • 規制市場(中国):限定的・補完的投資

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