
2025年にアジア太平洋地域(APAC)で日本企業が関与した輸送用機器領域のクロスボーダー M&A は21件となり、自動車部品・樹脂部品・タイヤ・ディーラー事業など幅広い領域で拠点整理と現地事業の強化が並行して進んだ。
中国・タイ・インド・インドネシアを中心に、生産拠点の最適化、販売網の獲得、非中核事業の選択的撤退といった実務的テーマが際立った一年だった。
中国:タイヤ・部品領域での持分譲渡・再編が進行
中国では、競争環境の変化を背景に、日系企業による持分譲渡や構造見直しが続いた。
- TOYO TIRE(5105) は、中国タイヤ生産子会社 TOYO TIRE ZHANGJIAGANG の一部持分を譲渡(1)。
ローカルメーカーの台頭や、価格競争の激化、地域ごとの事業採算性を踏まえた再編とみられる。
中国の自動車部品市場は巨大である一方、ローカル企業の市場支配力が高く、部分最適化・領域特化型の再投資/撤退が混在する局面が続いている。
インドネシア:自動車部品メーカーによる完全子会社化が進む
インドネシアでは、自動車部品メーカーによる事業支配強化が進んだ。
- ミツバ(7280) は、現地子会社 PT. ミツバ・インドネシア を完全子会社化し(1)、電装部品の生産・販売体制の統制を強化した。
インドネシアは二輪車・四輪車ともに市場拡大が続いており、日系部品メーカーにとっては**「地場生産の精度向上 × 現地OEMとの連携深化」**が投資テーマとなっている。
インド:ボディ部品メーカーの事業譲渡が進行
インドでは、需要拡大が進む一方で、収益性には業界間でバラツキがある。
- エイチワン(5989) は、自社子会社 H-ONE India の全株式を Belrise Industries に譲渡(1)。
同国のコスト構造・労務環境・OEM調達戦略の変化を踏まえた事業ポートフォリオ調整と整理できる。
インドでは、“選択的撤退と重点領域の深掘り” が同時に起きており、市場規模の拡大が必ずしも投資継続を保証しない典型例といえる。
タイ:樹脂部品・モジュール領域での支配強化が加速
タイでは、自動車製造クラスターの集積を背景に、日系企業の付加価値領域強化がみられた。
- ダイキョーニシカワ(4246) は、樹脂部品製造子会社 DMS Tech(タイ) を完全子会社化(1)。
軽量化ニーズの高まりを背景に、樹脂部品の品質管理と技術統合を狙った動きといえる。
タイは東南アジア最大の自動車生産国であり、樹脂部品・内装・外装パーツのサプライチェーン高度化が継続している。
オーストラリア:ディーラー事業の取得による販売網強化
オーストラリアでは、輸送用機器に関連する販売・ディーラー事業の取得がみられた。
- オプティマスグループ(9268) は、豪州 McCarroll Motors Mudgee から自動車ディーラー事業を買収(1)。
市場ニーズに合った車種提案とアフターサービス提供を目的に、販路獲得型の投資が進む。
→ 示唆:
日本企業は製造に加え、“販売・サービス領域の強化” にも踏み込み、川上から川下まで事業統合を進めている。
注目事例(2025年)
TOYO TIRE(中国)
タイヤ生産子会社の持分譲渡により、中国事業の再編と競争環境への最適化を実施。
ミツバ(インドネシア)
PT. ミツバ・インドネシアを完全子会社化し、電装部品の生産統制を強化。
エイチワン(インド)
H-ONE India の全株式をBelrise Industriesへ譲渡し、事業ポートフォリオの再設計を進めた。
ダイキョーニシカワ(タイ)
樹脂部品メーカー DMS Tech を完全子会社化し、軽量化・高品質化ニーズへの対応力を向上。
オプティマスグループ(オーストラリア)
自動車ディーラー事業を取得し、販売網の強化を図った。
2025年の輸送用機器M&A:構造的示唆
1. 生産拠点の最適化が最重要テーマに
中国・インド・ASEANで「撤退・集約・支配強化」が混在し、国別で経済性が大きく分かれる。
2. 軽量化・電動化に対応した部品統合が加速
樹脂化・高機能部品領域の完全子会社化が増加。
3. 競争激化市場では選択的撤退が進む
中国・インドでの持分譲渡や事業譲渡が象徴的。
4. 販売・アフターサービス網の確保が川下戦略として重要に
豪州・ASEANでのディーラー・流通事業の取得が継続。
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