【消費財・小売業界】アジア太平洋 クロスボーダー M&A レビュー:2025年の最新動向と2026年への示唆

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2025年にアジア太平洋地域(APAC)で日本企業が関与した消費財・小売領域のクロスボーダー M&A は32件となり、食品・日用品ブランドの取得、卸売・流通網の拡張、不採算地域の整理が並行して進んだ。
成長市場であるASEANでは食品・日用品・文具など生活密着型領域での投資が中心となり、中国・ミャンマーでは市場環境を踏まえた撤退や縮小もみられた。


東南アジア:食品・日用品ブランドおよび生活用品流通への投資が加速

東南アジアでは、人口増・中間所得層の拡大を背景に、食品・日用品・文房具といった消費財領域で積極的な投資が進んだ。

タイ:食品ブランドへの投資強化

丸紅(8002)は液体調味料メーカー Win Chance Foods に出資し、ASEAN食品市場の成長を取り込む体制を整えた。調味料・加工食品は現地需要が安定しており、ブランドの地場展開に適したカテゴリーである。

ベトナム:文具・事務用品の大型買収

コクヨ(7984)は、文房具・事務用品販売大手 Thien Long Group を、TOB等により約276億円で買収した。教育市場の伸長・日用品需要の高さを背景に、生活用品領域での流通基盤獲得が事業成長に直結する。

示唆
ASEANでは、「日本ブランド × ローカル市場」の補完関係が機能しやすく、食品・文具といった必需消費領域での投資余地が引き続き大きい。


中国:競争激化を背景にしたブランド・小売の選択的撤退

中国市場では、小売・アパレルを中心に不採算事業の譲渡・撤退が続いた。
ローカルECプラットフォームや低価格ブランドの台頭により、従来のリアル店舗中心モデルには構造的な競争力低下が見られる。

2025年の複数事例は、**「中国市場に対する選択と集中」**が本格化したことを示している。
今後はニッチブランド戦略やEC特化型モデルへの転換が必要となる。


香港:卸売・流通網の獲得を目的とした事業取得が進む

象印マホービン(7965)は、家庭用品の卸売・小売企業 Lin & Partners Distributors(香港) を買収し、香港および華南地域への販売網を強化した。

香港は域内物流・貿易のハブ機能を持ち、越境ECとの連携可能性も高い。
生活用品ブランドにとって、卸売チャネルの確保は在庫回転の向上と市場浸透に直結する。


ミャンマー:事業環境を踏まえた撤退・縮小が継続

ミャンマーでは、政治情勢や物流制約・購買力低迷を背景に、複数の企業が事業譲渡に踏み切った。

消費財領域では、設備産業を含む製品供給企業が市場撤退し、ハイリスク市場でのオペレーション方針を見直す動きが加速した。

示唆
同国では足元の安定性を欠くため、部分撤退またはリスク抑制型の事業継続が現実的な選択肢となる。


注目事例(2025年)

丸紅(タイ)

液体調味料メーカー Win Chance Foods 社へ出資し、ASEANの食品カテゴリー拡大と現地ブランドへのアクセスを強化。

象印マホービン(香港)

Lin & Partners Distributors(家庭用品卸売・小売)を買収し、華南市場を含む流通網を獲得。

コクヨ(ベトナム)

文具・事務用品大手 Thien Long Group を約276億円で買収し、ASEAN文具市場の覇権獲得に向けて大きく踏み出した。


トレンド整理:消費財・小売M&Aに見られた構造的動き

1. ASEANでの「生活密着型カテゴリー」への投資が最も強い

食品・文具・家庭用品など安定した需要を持つ領域で、日本企業の成長投資が継続。

2. 中国市場では “再投資 or 撤退” の明確な選択が求められる

事業環境の変動により、利益貢献度に応じた選択的縮小が加速。

3. 卸売・流通網の取得が市場展開の即効性を高める

香港などでの卸売チャネル獲得は、近隣市場へのアクセス向上につながりやすい。

4. 食品・日用品は、APAC全域で引き続き伸びる長期テーマ

人口動態・購買力・消費パターンの変化が支え、投資余地が最も大きい。

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